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どうしてオンラインゲームばかりなのか
これはある雑誌のために連載される予定だった文だ。
ところが雑誌の企画自体が消えてしまう呆然の展開になってしまったために、宙に浮いてしまったので、もったいないから、これをblogにアップすることにした。
5回分ぐらいの文がたまっているので、それを今のデータに書き直しつつ、アップしていくつもり。
そのあと、どうするかはなーんも考えてない(笑)


超久しぶりに続き。
前述した国策としてネットワーク大国を目指したのにうまく『ディアブロ』と『スタークラフト』という韓国人の国民性にマッチしたネットワーク(対応)ゲームの名作が発売され、一気に「ゲームといえばネットワークだ」という雰囲気が盛り上がったからオンラインゲームが『主流』になったならわかるがオンラインゲームしかないのはおかしい…ということに触れた文章は不勉強なのか、少なくとも僕は読んだことはない。

つまり問いは、こうなる。
インターネットが普及し、ネットワークゲームが流行するまでに、コンソールにもパソコンにも膨大な量のゲームが発売されていた。そして韓国は日本の隣なのにそれらのゲームが売られていた市場はどこにいったんだ?ということだ。

その答えは…
コンソールゲーム・PCゲームを問わず、過去の韓国はコピー天国で、今ではコピーは減ったが、今度は中古天国で、一握りの新品と山のような中古が売られていて「市場としてまともに成り立ったことが一度もない」
という、とんでもない事実だ。


これには実は理由がある。
まずその一つめが、全くもって不可思議な経済的な問題なのだが、韓国では新品を売ると税金がかかるが中古には税金がかからない(理由はなぜだかは知らない。これがゲームや電子機器のみに適用されるだけなのかも知らない)。
このため、新品を売るより中古を売る方が利益率が高いし、同じ利益を得るなら中古の方が必ず安いことになる。
このためゲーム市場の初期に店は
1)新品を少量買う。
2)売る
3)ユーザーがコピーする。
4)中古として店に買い取ってもらう」
5)(2)に戻る

と、これを繰り返すことで利益を上げる構造が出来上がってしまったわけだ。
ちなみにこのシステムは韓国だけでなく、世界中でパソコン市場の初期に流行している。日本でもソフトレンタルショップとして一時流行した。もちろん疑似レンタルで、日本では違法な商売として潰れたが、これによってゲーム業界が受けた傷は大きく、ソフトのレンタルに対して異様にアレルギーのある業界が出来上がってしまった
加えて当時は最強ゲーム国家のひとつ、日本からの文化の輸入が韓国で禁じられていたためブームだったファミコンなどが「ハードは輸入され、ソフトはコピーされる」という状況でブームが来てしまった。そのためコンソールソフトは「コピーが当たり前」の世界になってしまった。
【追記】少し分かりにくいと思ったので、追記しておく。ファミコン当時はまだ日本の文化は輸入禁止だった。つまりハードはなんとかなってもソフトがなんともならない。そこでソフトを密輸入して、改造して、売ったわけだ。当たり前だがそうなるとコピー品になり、コピーが当たり前になった、というわけだ
そして、これがコピーの減った今でも普通のシステムになってしまい、まるでレンタル店のようなシステムで利益を上げるシステムとして完成してしまい、相変わらずこの形で商売をするのが当たり前になっている。
基本的に中身の劣化が極めて小さな(物理的な破損をしない限りは中身は変わらない)デジタルメディアだからこそやれる商売だが、新品の売り上げで利益を得るメーカーにとっては恐ろしい大問題だ。
これではメーカーは成り立たないが「疑似レンタル同然のシステムを前提にショップや市場が出来上がってしまった」ために、少なくとも現時点では市場から普通のソフトを売ってまともに利益を上げることが非常に難しい状態だ。
(同じ買うのなら安い方がいいのが普通だし、それが違法でない上に<中古が普通>なのだからそちらを使うのが人情というものだろう)
つまり韓国は昔はコピーで、今は中古でコンソールやパッケージベースのシングルゲームが市場として成り立っていない、すなわち国外向けのパッケージゲームを作るゲームメーカーはあっても、国内市場は壊滅状態だったのだ。
【注】これを書いたときにはX360やWiiのコピーが余り普及していなかったので、上記のように書いたが、今では韓国を遥かに上回る最強のコピー天国中国から大量のX360改造キットやらWii改造キット、さらにマジコンが流れ込んできており、また韓国もかなりのコピー天国に戻ってしまっている。

ところがオンラインゲームには「コピー」と「中古」の問題が全くない。
当たり前の事ながらサーバーに接続しないとプレイ不可能にするのは簡単だし、そこでお金を取るようにすればとりっぱぐれはない。
つまり、メーカーはプレイするユーザーを集めることが出来れば、確実に売り上げが出せる状態になる
そして、前述したようにいわゆるパッケージゲーム市場は壊滅状態だったのだから、そりゃあオンラインゲームを作るし「オンラインゲームだけ」になってしまうわけだ。

【注】ところでビデオレンタルと同じなら、メーカーは利益をあげられるのでは? と疑問を持つ人もいると思うので、簡単に「レンタルビデオ」の利益構造(ビジネスモデル)を解説しておこう。
ビデオレンタルは「一般に売られる物より遥かに高いレンタル専用のビデオ」を使うことになっている(レーベル面を見るとレンタル専用と書かれている。最近ではセルビデオと少し中身が違うのが通例になっていて、たいていはセルビデオの方がコンテンツの数が多い)。
つまりレンタル店に1本売れば、普通のビデオの10本分とかの利益になるようになっているのでメーカーは成り立つわけだ。
また、レンタル店は、仮に1本を普通のビデオ10本分で購入しており「レンタル料が1回普通のビデオ1本分」とすると、大ざっぱには10人が1本のビデオを借りて初めて利益が出ることになる。
つまりメーカーは「レンタルで沢山の人が見るモノなんだから、高く売りますよ」とすることで、利益を確保するし、レンタル店は「借りる権利」を薄利多売することで儲けるというシステムなわけだ。

しかも韓国にはオンラインゲームを普及させるうえで大きなメリットが一つあった。
それが国民背番号制。韓国の国民は一人が一つ国民番号を持っており、これを利用して個人を識別することが出来る。
【注】ちなみにこの国民番号(正確には納税者番号だが)が韓国にあるのは知っていたが、いつもらうのか、僕は知らなかった。それを今回韓国で仕事をするようになって知った。17歳になったらもらうのだそうだ。
これがどうしてオンラインゲームの普及で役に立つのかというと、オンラインゲームの問題点の一つに匿名性がある。
例えば5つのアカウント(ゲームをプレイする権利)を購入して、それを別々にプレイすれば5人の人間を好きにプレイすることが出来る。
そして、この5つのキャラクタを例えば対立したグループに入れたり、一つのキャラが悪いことをやっても、他の4人がばれなければ平気だし、それどころか別人のフリをして、悪口言ったりとか、ともかく悪い使い方が出来る。
これはそれを利用したゲーム性もあえてありえるのだが、少なくともゲームの中にいるキャラクタの信頼性を損なう危険があるのはわかるだろう。
ところが韓国ではこの問題のかなりの部分(完全ではない)を国民番号を利用することで回避出来る。
例えば一つの国民番号に1つのキャラクタしか作れないゲームにすれば、理論的には「一人のプレイヤーに対して一人しか対応しない」ことになるし、国民番号でユーザーを管理すれば「ゲームのルールを大幅に破り、出入り禁止になったプレイヤーが再度同じゲームをする」のも非常に難しくなる。
また、国民番号必須にすると、すなわち自動的に17歳以上に区切ることも出来る。
つまり「プレイヤー同士の信頼関係を築く物」として国民番号があったことにより、ネットゲームの「相手が分からない」怖さを大きく軽減出来たわけだ。
例えば有名なラグナロク・オンラインでは国民背番号を入力し、それによって男女をチェックし性別を一致させる(つまり男は女キャラを作れないし、女は男キャラを作れない)ことをしていたので「出会いの場」として機能していた…なんて信じられない話もあるほどだ。
【注】当たり前だが、子供は常にそういう大人のゲームで遊びたがるモノなので、18禁のゲームに親の国民番号盗んでアクセスしててバレて怒られる…なんてのは、韓国の子供にとてもありがちな展開だったりする。

と、このような様々な条件が重なって、韓国では「PC房」の流行により、ゲームメーカーがオンラインゲームを向いたところで、韓国のオンラインゲーム市場を決定づけるゲームが登場する。
それがリネージュだ。
(続く)

余談だが、この韓国で一度本当にコンソールマシン市場が出来かかったことがある。それがDS。DSを任天堂が韓国で売り始めたとき、バカ売れし、任天堂のソフトも本当に売れ、韓国でコンソールゲーム市場が初めて出来上がり、メーカーもこぞって参入しようとしていた。
特にDSは女の子に売れていたので、女の子向けの音ゲー(韓国ではオーディションの大ヒット以来、音ゲーは一つの絶対的なジャンルとして確立しており、音ゲーは女の子のプレイヤーが非常に多い)を「オーディションが出る前に売ろう」とするメーカーがたくさんあり、僕も仕事の依頼を受けた(実に6社から話があった)。
だがそこにマジコンが登場。まさにあっという間に普及していき、脆弱な韓国のコンソールゲームマシン業界は一瞬で壊滅。今や韓国で「DSのゲームを作る企画」を立てる人間など誰もいないし、僕の仕事もなくなった。
同じ事が日本では起こらない保証は全くないが、マジコンを使っている人間は、平気でコピーをし、自分が市場を破滅させようとしていることにまるで気がついてないようだ。
僕は韓国で売っているDSで韓国語でゲームを出来ない韓国人を不幸だと思う。そして日本は同じ事になりかねないところにいると思うのだが…
|| 01:35 | comments (4) | trackback (0) | ||

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コメント
>>はちはちさま
オンラインゲームの登場によって、コピーが蔓延しているところでも、クリエイターは育つようになりました。ですが、そのクリエイターは「単体として物を売るときの値段」はわからなくないようです。

また、韓国は一時コピーが本当に減って、うまく行きそうになっていただけにマジコンによって市場が破壊されたのが残念です。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/07/18 18:57 | s/ae3Cd6 |
前回のイースのプロテクト用のメッセージの話と微妙にリンクしてて面白いです。
よくコピーが蔓延してるような土壌ではクリエイターは育たないといいますが、
韓国や中国の市場はそれをよく表してるんじゃないでしょうか?
私らのファミコン世代は、まだ健全だった時代にブームを享受でき楽しめたのは
幸運だったということなんでしょうかね

>とてもそんな民度なんて期待出来ないと思ってます
私も今の日本のマジコンなどのコピー関連の現状は、もはや民度やモラルなどで
なんとかなるようなものではないというのは同感です。将来は国民番号を登録必須とか、
面倒な手続きを経ないとゲームが遊べなくなるなんてのもあり得ない話ではなくなってますね。
| はちはち | EMAIL | URL | 10/07/18 17:13 | 7Q0Cf0A. |
PCでコピーツールが流行してたとき、結局メーカーがファミコンに逃げて、実質的にPC市場が死滅するまでコピーはなくならなかったことを考えると、とてもそんな民度なんて期待出来ないと思ってます。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/07/18 12:21 | s/ae3Cd6 |
なりかねない所まで来ているとは思う。

ただ、最後の最後まで、俺は日本人の民度に期待したいのも事実。
| kerberosJP | EMAIL | URL | 10/07/18 01:59 | os.AL/rI |
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