2010-04-10 Sat [ Ysを作った頃 ]
前回はコレ
過去記事の集合体はコレ
この話は1988-89年頃、PCエンジン版のイースを作るとき、僕が経験した話を出来るだけ正確に記録に残すつもりで書いている。ただし、これは
だから、当時の正確な記録ではない可能性はあるのは理解して欲しい。
今回は、前回の続きで特殊な話なので、以下の文を読んでご了解ください。
僕はファルコムが整理した現在のイースの設定をもちろん尊重しているが、現在のイースの設定は、はオリジナルスタッフ(宮崎君・橋本君・倉本君・山根など)がファルコムを離脱してから長い年月が経った後、整理されたモノで、オリジナルスタッフの考えたイースとはかなりかけ離れた物になっている。
そこで、前回と今回はオリジナルスタッフが「何を考えていたのか」を当時聞いた内容と、それが実際にイース1・2にどのように反映されたか、についてを書いていきたいと思う。
なお設定の話なので、全部ネタバレでイース1および2を知っていることを前提に話を書いているので、イースについて知らない人でプレイしようと思っている人は読まないことを強くお勧めしておく。
なんかエターナルあたりになると「最初は銀で、そのうちクレリアが掘り出された」なんて話になっているらしいが、オリジナル設定では最初からクレリアである。
「クレリアを埋めたならさあ、洗わなくてもいいクレリアの皿だの、水が流れるクレリアの便器だのなんてモンが掘り出されても不思議じゃないのに、なんで出てこないんだ?」
と聞いたら
「そんなカッコ悪いものはイースの人は使わなかったんですよ、ゴー」
と山根は言っていたので、なんも考えていなかったらしい。
しょうがないから、クレリアについては以下の設定になっている。
とても大事な話をする。
クレリアが掘り出されたからといって魔物が復活したわけではない。魔物を復活させたのはダルク・ファクト。これが現在の設定でどうなっているかは知らないが、オリジナル設定では疑いもなくダルク・ファクトだった。
黒真珠がなければ魔法はない(エンディングで分かるが)。クレリアは魔法増強金属であり、誰かが封印を解かない限りはクレリアはただの銀も同然だ。
では誰が魔物を(つまり黒真珠を)復活させたのかというとダルク・ファクトだ。
つまりイースのストーリーの流れは
そしてダルク・ファクトは魔物をもコントロールし、女神もコントロールして世界を征服しようとしていた。もちろん、イース2のオープニングで分かるとおり、ダレスもダームも歯牙にもかけておらず、最終的にダームが外に出てきたら、ダルク・ファクトなど木っ端微塵だと思っていたのは明らかだが。
この流れはPC88版のソースコードを読んだ人間には明らかな事実で、しかも、そのテキストをFC版イースのダルク・ファクトによって知ることが出来る。
というのも、FC版のダルク・ファクトはオリジナルではソースコードにしかなくゲームでは表示されないメッセージを復活させて、どのようなストーリーなのか明白にネタバレする。PCエンジン版を製作中に、少しでも違うところがあるイースは全てプレイするのをスタッフで手分けしてやったのだが、このメッセージが出たときは、本当に目をむいた。
以下が、その文である。なお、オリジナルはひらがなによる分かち書きだが、あまりに読みづらいので漢字かな交じり文に修正してある。
もちろん、後半部のテキストがコメントになった理由は明快だ。これではファクトを倒したところで、悪魔やらフィーナやらはどうなるのかとか、そういう部分が全然明らかでないまま終わってしまうことになるのだから、コメントアウトしておかないと話にならない。2が作れる保証などなかった傍証といえるだろう。
さて、PCエンジン版で、このテキストを出せば、話がわかりやすくなるのは疑いもない事実だったので、後半部のコメントアウトされているところを復活させるかどうかは、本当に迷った。これを読めばダームが廃鉱の奥にいたのは明白になり、ストーリーが非常に把握しやすくなるからだ。
で、迷いに迷ったが、結局やめた。というのも、FC版はどういうつもりで復活させたのかは知らないが、少なくとも1・2が繋がっているPCエンジン版では、イース2の最後でのフィーナとの対面を台無しにしてしまう致命的な問題があった。
それを避けるためには、このテキストのかなりの修正が必要になるが、だいたい表示されないメッセージを表示して、そのうえ改変するので、度が過ぎると思ったので、ダルク・ファクトは後半部のネタバレをしゃべらないことになった。
エステリアは嵐の海に囲まれて近づけない、という設定になっているのにPCエンジン版は…とWikipediaに書かれており、これについて「矛盾だ」などと書いている人がいるので説明しておこう。
エステリアに定期船で行くようにしたのかというと、理由がいくつかある。
まず山根がコンテを書いたとき、定期船にしたからだ(笑)
「嵐の結界はいいのかよ?」
と聞いたら
「ま、雰囲気みたいなもんでしたから、これでいいっすよ!」といっていた。
また、当時のファルコムに残っていた桶谷・大浦君も了承していた。
つまり、彼らにとっては「嵐の結界」は雰囲気程度のものだったのだ。
また、自分自身も定期船の方がいいと思っていた。
というのも、仮に魔物が出て嵐の結界があるとしたら、エステリアの街の生活が成り立っていないはずなのに、街の人が困っている気配がさっぱりない。騒いでいるのはサラぐらいのものだ。当時のRPGなんだから…といってしまえばそれまでだが、それでもイース2のテキストと比べると、あまりに脳天気だ。
テキストを全面的に変更する、という大技もあったが、もちろんこれをするとオリジナルの大幅な改変だし、それならば「魔物が現れて騒ぎにはなっている地方の町(別段行くのには困らない)」のほうが、よほど話が成り立つし、別段それで問題ない。
というわけで、定期船のコンテを書いた山根案に賛同することにした。
かくして、アドルはエステリアの地に降り立ったわけである。
過去記事の集合体はコレ
この話は1988-89年頃、PCエンジン版のイースを作るとき、僕が経験した話を出来るだけ正確に記録に残すつもりで書いている。ただし、これは
1)21年前の話で、記憶違いの可能性は十分にある。
2)僕が体験したり思ったりしたことを書くようにしているが、伝聞情報(二次情報程度)もある。
2)僕が体験したり思ったりしたことを書くようにしているが、伝聞情報(二次情報程度)もある。
だから、当時の正確な記録ではない可能性はあるのは理解して欲しい。
今回は、前回の続きで特殊な話なので、以下の文を読んでご了解ください。
僕はファルコムが整理した現在のイースの設定をもちろん尊重しているが、現在のイースの設定は、はオリジナルスタッフ(宮崎君・橋本君・倉本君・山根など)がファルコムを離脱してから長い年月が経った後、整理されたモノで、オリジナルスタッフの考えたイースとはかなりかけ離れた物になっている。
そこで、前回と今回はオリジナルスタッフが「何を考えていたのか」を当時聞いた内容と、それが実際にイース1・2にどのように反映されたか、についてを書いていきたいと思う。
なお設定の話なので、全部ネタバレでイース1および2を知っていることを前提に話を書いているので、イースについて知らない人でプレイしようと思っている人は読まないことを強くお勧めしておく。
曖昧だったところをイース1・2ではどのように最終的に決めたか(または変更した場合)をこの色のワクの中に書いておく
7)エステリアのみなさんが銀という名前でクレリアをまた掘り出す。
なんかエターナルあたりになると「最初は銀で、そのうちクレリアが掘り出された」なんて話になっているらしいが、オリジナル設定では最初からクレリアである。
「クレリアを埋めたならさあ、洗わなくてもいいクレリアの皿だの、水が流れるクレリアの便器だのなんてモンが掘り出されても不思議じゃないのに、なんで出てこないんだ?」
と聞いたら
「そんなカッコ悪いものはイースの人は使わなかったんですよ、ゴー」
と山根は言っていたので、なんも考えていなかったらしい。
しょうがないから、クレリアについては以下の設定になっている。
魔法の場がある状態で成型されたクレリアは、魔法がなくなったとき、普通のものより遥かに速い速度で崩壊する。
8)魔物復活
とても大事な話をする。
クレリアが掘り出されたからといって魔物が復活したわけではない。魔物を復活させたのはダルク・ファクト。これが現在の設定でどうなっているかは知らないが、オリジナル設定では疑いもなくダルク・ファクトだった。
黒真珠がなければ魔法はない(エンディングで分かるが)。クレリアは魔法増強金属であり、誰かが封印を解かない限りはクレリアはただの銀も同然だ。
では誰が魔物を(つまり黒真珠を)復活させたのかというとダルク・ファクトだ。
つまりイースのストーリーの流れは
- クレリアがまた掘り出された
- 女神の間(イース中枢)が見つかる。
- ダルク・ファクトが魔物を復活させる=女神の封印を解く=ダームの封印が解ける(完全ではない)
- 魔物が復活する。クレリアが掘り出されていたのもあってパワフル。
- ダルク・ファクトが魔物のパワーを得る←魔法を使ったと思われる。
そしてダルク・ファクトは魔物をもコントロールし、女神もコントロールして世界を征服しようとしていた。もちろん、イース2のオープニングで分かるとおり、ダレスもダームも歯牙にもかけておらず、最終的にダームが外に出てきたら、ダルク・ファクトなど木っ端微塵だと思っていたのは明らかだが。
この流れはPC88版のソースコードを読んだ人間には明らかな事実で、しかも、そのテキストをFC版イースのダルク・ファクトによって知ることが出来る。
というのも、FC版のダルク・ファクトはオリジナルではソースコードにしかなくゲームでは表示されないメッセージを復活させて、どのようなストーリーなのか明白にネタバレする。PCエンジン版を製作中に、少しでも違うところがあるイースは全てプレイするのをスタッフで手分けしてやったのだが、このメッセージが出たときは、本当に目をむいた。
以下が、その文である。なお、オリジナルはひらがなによる分かち書きだが、あまりに読みづらいので漢字かな交じり文に修正してある。
よくも本をそこまで集めたものだ。誉めてやろう。
だがイースの本に隠された謎を知られてしまっては、私の計画が、ふりだしに戻ってしまう。
この世にダルク・ファクトの名を残すためにもお前には死んでもらう。
ここから先が出ないようになっていた。
冥土のみやげにいいことを教えてやろう。
お前が神殿から助けた娘はジェンマの章に記されるイースの国の女神。
彼女は悪魔を封印するために数百年の間、地下で眠り続けていたのだ。
私が封印を解いたため、あの娘も眠りから覚めたというわけだ。
もっともイースの時代の記憶は失っているがね。
お前を殺した後、あの娘は私がはした女としてもらってやる。
だがイースの本に隠された謎を知られてしまっては、私の計画が、ふりだしに戻ってしまう。
この世にダルク・ファクトの名を残すためにもお前には死んでもらう。
ここから先が出ないようになっていた。
冥土のみやげにいいことを教えてやろう。
お前が神殿から助けた娘はジェンマの章に記されるイースの国の女神。
彼女は悪魔を封印するために数百年の間、地下で眠り続けていたのだ。
私が封印を解いたため、あの娘も眠りから覚めたというわけだ。
もっともイースの時代の記憶は失っているがね。
お前を殺した後、あの娘は私がはした女としてもらってやる。
もちろん、後半部のテキストがコメントになった理由は明快だ。これではファクトを倒したところで、悪魔やらフィーナやらはどうなるのかとか、そういう部分が全然明らかでないまま終わってしまうことになるのだから、コメントアウトしておかないと話にならない。2が作れる保証などなかった傍証といえるだろう。
さて、PCエンジン版で、このテキストを出せば、話がわかりやすくなるのは疑いもない事実だったので、後半部のコメントアウトされているところを復活させるかどうかは、本当に迷った。これを読めばダームが廃鉱の奥にいたのは明白になり、ストーリーが非常に把握しやすくなるからだ。
で、迷いに迷ったが、結局やめた。というのも、FC版はどういうつもりで復活させたのかは知らないが、少なくとも1・2が繋がっているPCエンジン版では、イース2の最後でのフィーナとの対面を台無しにしてしまう致命的な問題があった。
それを避けるためには、このテキストのかなりの修正が必要になるが、だいたい表示されないメッセージを表示して、そのうえ改変するので、度が過ぎると思ったので、ダルク・ファクトは後半部のネタバレをしゃべらないことになった。
9)アドルがイースにたどり着く
エステリアは嵐の海に囲まれて近づけない、という設定になっているのにPCエンジン版は…とWikipediaに書かれており、これについて「矛盾だ」などと書いている人がいるので説明しておこう。
エステリアに定期船で行くようにしたのかというと、理由がいくつかある。
まず山根がコンテを書いたとき、定期船にしたからだ(笑)
「嵐の結界はいいのかよ?」
と聞いたら
「ま、雰囲気みたいなもんでしたから、これでいいっすよ!」といっていた。
また、当時のファルコムに残っていた桶谷・大浦君も了承していた。
つまり、彼らにとっては「嵐の結界」は雰囲気程度のものだったのだ。
また、自分自身も定期船の方がいいと思っていた。
というのも、仮に魔物が出て嵐の結界があるとしたら、エステリアの街の生活が成り立っていないはずなのに、街の人が困っている気配がさっぱりない。騒いでいるのはサラぐらいのものだ。当時のRPGなんだから…といってしまえばそれまでだが、それでもイース2のテキストと比べると、あまりに脳天気だ。
テキストを全面的に変更する、という大技もあったが、もちろんこれをするとオリジナルの大幅な改変だし、それならば「魔物が現れて騒ぎにはなっている地方の町(別段行くのには困らない)」のほうが、よほど話が成り立つし、別段それで問題ない。
というわけで、定期船のコンテを書いた山根案に賛同することにした。
かくして、アドルはエステリアの地に降り立ったわけである。
コメント
はじめまして。
>「死んだはずの人間が生きている」件
そのうち書きますが、サラのことです。
まあ、一応理由はあるんですが、それもそんとき書きます(笑)
>「死んだはずの人間が生きている」件
そのうち書きますが、サラのことです。
まあ、一応理由はあるんですが、それもそんとき書きます(笑)
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/04/14 19:06 | 2OXmdoFs |
Wikipedia に書かれているPCエンジン版イースの矛盾点「嵐の結界」については分かりましたが、「死んだはずの人間が生きている」件についてはPCエンジン版をプレイしたことがないので分かりません。占い師サラのことでしょうか??
5月の連休に、PCエンジン版イースを友人から借りる約束をしています。借りたらエミュレータ(MagicEngine)でプレイする予定です。今から楽しみです。
5月の連休に、PCエンジン版イースを友人から借りる約束をしています。借りたらエミュレータ(MagicEngine)でプレイする予定です。今から楽しみです。
| 南風 | EMAIL | URL | 10/04/14 17:37 | /IOVSgpE |
PC-9801版イースIとイースII. イースIIIをリアルタイムで経験した者です。このゲームは私も非常に思い入れがあり、中の人から設定の詳細を聞かせて頂いて嬉しく思っています。
心よりお礼申し上げます。
岩﨑さんの書き込みに触発されて、今はフェルガナの誓い(だと思います)に添付されていた、ProjectEGG版 PC-8801版イースIとWindows版イースI, II COMPLETEのイースIを同時にプレイ中です。
先ほど、Windows版イースIの実行ファイルをバイナリファイルエディタ(秀丸エディタのバイナリ表示モードとBz)で中をざっと見たのですが、後半部のコメントは見つかりませんでした。もう少し詳細に見ないと分からないのでしょうね。漢字コードを色々と変えては見たのですが。
心よりお礼申し上げます。
岩﨑さんの書き込みに触発されて、今はフェルガナの誓い(だと思います)に添付されていた、ProjectEGG版 PC-8801版イースIとWindows版イースI, II COMPLETEのイースIを同時にプレイ中です。
先ほど、Windows版イースIの実行ファイルをバイナリファイルエディタ(秀丸エディタのバイナリ表示モードとBz)で中をざっと見たのですが、後半部のコメントは見つかりませんでした。もう少し詳細に見ないと分からないのでしょうね。漢字コードを色々と変えては見たのですが。
| 南風 | EMAIL | URL | 10/04/14 17:10 | /IOVSgpE |
うひゃ~エターナルの仕事された方ですか。
自分もイース1・2作るときは本当に悩んだので、よくも悪くも「名作」といわれる作品の移植だったり派生作品を作るのは大変なの分かります。
でも、エターナルとか見てると「当時、この表現力がありゃあなあ」と悔しく思いましたが(笑)
自分もイース1・2作るときは本当に悩んだので、よくも悪くも「名作」といわれる作品の移植だったり派生作品を作るのは大変なの分かります。
でも、エターナルとか見てると「当時、この表現力がありゃあなあ」と悔しく思いましたが(笑)
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/04/13 11:13 | 2OXmdoFs |
ずっと読みたかった。シャンパン一本あけつつ、男泣きです。
オリジナルの思いも、積年のファンコミュニティと歴代スタッフの思いも、
全部受け止めリスペクトし切るのが派生作品を預かった者の務め。
まぁ駄目なこともずいぶん仕出かして来てますが。
ダルク=ファクトのセリフ後半部はYsEternalでももちろん出ませんが、
データの解析した人には見つかるように仕込みました。
オリジナルの思いも、積年のファンコミュニティと歴代スタッフの思いも、
全部受け止めリスペクトし切るのが派生作品を預かった者の務め。
まぁ駄目なこともずいぶん仕出かして来てますが。
ダルク=ファクトのセリフ後半部はYsEternalでももちろん出ませんが、
データの解析した人には見つかるように仕込みました。
| 軽澤 誉 | EMAIL | URL | 10/04/13 00:39 | uGwjJsyo |
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