2010-12-08 Wed [ ゲームについて::イロイロ ]
ニコ生出たとき「ときメモの話をしてくれ」とコメントに流れていて、喋りたかったんだけど、返事できなかったのでここで。
この文で「ときメモ」というのはときめきメモリアル1を指すと思ってもらっていい。
さて、PCエンジン版『ときメモ』を短くまとめると、以下のテキストになる。
微妙に今の人が思っている『ときメモ』と違うだろう。当たり前だ。
『ときメモ』は恋愛育成ゲームと呼ばれるジャンルが登場する前のゲームで、上記シナリオは企画者が想定した『ときメモ』のプレイ。
企画者達の描いた上記のプレイシナリオに、当時レビューをした僕はあっさりかかった。
だいたい雑誌に来た広報資料に「藤崎詩織にふさわしい男になるために3年間の高校生活で自分を鍛える」と書いてあったし、その他大勢のヒロインの事なんて一言も書いていなかった(マルチエンド程度は書いてあったはずだが、マルチエンドもプリンセスメーカー系では当たり前だ)。
だから本当に幼馴染の藤崎詩織を落とすために自分を鍛える『プリンセスメーカー』だと思ってプレイを始めたし、まさかパラメータの一つ一つに合わせてヒロインが設定されていて、山のようにいるなんて想像もしていなかった。
そして当たり前だが、パラメータは上げれば上げるほどいいのがゲームの常識だ。だいたい「才色兼備のパーフェクトヒロイン、藤崎詩織を落とせ」と言われているんだから、全パラメータ上げ倒せばいい、と思うに決まってる。で、パラメータを上げると、次から次へとヒロインが現れ、爆弾処理でグチャグチャになって、後半はデートを管理するために必死で目を血走らせる、とてもゲームとして面白いものになっていた。
後に、萌えゲーになったとき、オンリープレイと称して藤崎詩織を無視し、自分+好きな子だけ出てくるようにしてプレイするのが当たり前になったけれど、当時初めてプレイした人のほとんどは、この形でハマったと思う。
レビュワーをやっていたプロのプレイヤーだった僕が面白すぎてハマったぐらいなのだから、普通のプレイヤーなんかイチコロだったんじゃなかろうか…というか、イチコロじゃなきゃ、あんなに流行しない。そんなわけで市場として末期にあったPCエンジンとしては途方もない大ヒットをし(いま風にいうなら、ブログやgoogleの検索ランクで1位をぶっちぎりで走るような感じ)、その勢いでPS1版が発売されることになった。
さて。
恋愛育成ゲームと呼ばれるジャンルをフォーマットとして確立したのは、PCエンジン版ではなく、疑いもなくPS1版ときメモだ。
ついでに書くと、豪華な特典をつけて初回限定版を華々しくブチあげたのもPS1版が史上初ではないか…と思うのだが、それはともかくとして。
このフォーマットというのは、出会い系ヨロシク、もしくはキャバクラよろしく、ゲーム中に登場するヒロイン達をズラズラとカタログ形式で並べ、プレイヤーが「どれにしようかな」と選択できるようにしたという意味。
当たり前だが、『ときメモ』はPS1で発売されたときはネタバレしてたから、当時のヒロインの人気を逆用してアイドルみたいにして宣伝し、いわば擬似アイドル・擬似恋愛ものとして売った(実際にアイドルとして売ったキャラもいたじゃないか…という話はともかくとして)。
実際、そう売る以外方法がない状態だったけれど、これがモーレツに効果的だったもので、以降「多数のヒロインがいて、一部隠しヒロインを除いて、雑誌などで顔から性格からスリーサイズから紹介され、プレイヤーは俺はこの子に萌えるぜ! と目星をつけておく」スタイルが確立したわけだ。
そして、当時『ときメモ』PS1版は爆発的に売れ、一大ギャルゲーブームが来たんだけど、ここで大事なことが一つある。
当たり前だけど「他の女の子がいっぱいいる」のを知っていたら、最初に書いたプレイシナリオは成り立たなくなってしまう。だからPCエンジン版では情報がコントロールされていて、他キャラには他の子もいる程度にしか触れられていなかったし、もちろんそれらのキャラが全て等分にヒロイン扱いされていることなんて書かれていなかった。
つまりプレイヤーの大半は藤崎詩織を落とすつもりでプレイを始めて、他のキャラに萌えたのであって、一番最初からキャバクラか風俗のごとくカタログ化されている女の子を眺めて「俺はこの子と仲良くなるもんねー」という動機でゲームをスタートしてない。
そして、この「藤崎詩織を落とすつもりでプレイを始めた人たちが萌えた」熱狂なくして、ときメモのムーブメントを語る事はできない。
これが優れていたわけではない。もちろんゲームとして素晴らしく優れていたわけだが、それとはまったく別のレベルで、この手は初代だから通用した、たった一度だけのプリンセスメーカーだと言って違うものを食わせる、やり口としてはムチャな手品だ。
このあと出たゲームがどれだけ優れていようと、二度目から後はプレイヤーもネタを知っている。
隠したところで、ジャンルや雰囲気を見れば想像がつくから、隠してもほぼ意味は無い。だいたい雑誌にとって女の子のグラフィックは見栄えするから、恋愛育成ゲームは隠しキャラを除けば、出会い系サイトのノリで、全キャラがカタログ化されるのが当たり前だし、それの方が売り上げが伸びるチャンスは大きいのは間違いない。
つまりPCエンジン版ときメモの熱狂は、二度と起きることのない現象なのだ。
そう考えたとき、ときメモPCエンジン版は、ウィザードリィが登場してRPGが確立した瞬間や、スペースインベーダが登場してシューティングが確立した瞬間と同じように、ゲームジャンルが登場した瞬間、ただ一回だけ起こる奇跡を目の前で見たのだろう。
そして、そのゲームのレビューを書けた偶然には、深く感謝しているのだった。
ちなみに、このあたりのことを書いた決戦前夜というタイトルの同人誌を10年ほど前に出したのを、このブログに再録してある。以下はそのリスト。
1994年4月19日19:06 NiftyServe
ニフティにアップロードした、発売前のROMでPCエンジン会議室にレビューする暴挙をやらかした書き込み。
決戦前夜(1) - 承前と1993年冬
決戦前夜(2) - 1994年春
決戦前夜(3) - レビュー、始まる
決戦前夜(4) - そして発売へ
決戦前夜(5) - 収縮~決戦前夜(終)
決戦前夜(6) - 追補
この文で「ときメモ」というのはときめきメモリアル1を指すと思ってもらっていい。
さて、PCエンジン版『ときメモ』を短くまとめると、以下のテキストになる。
プレイヤーは「3年の間に藤崎詩織にふさわしい男になれ(落とせ)」という目標とともに、当時流行していた『プリンセスメーカー/卒業/誕生』型のパラメータゲームに見えるものを渡される。藤崎詩織は才色兼備の究極キャラ。だからプレイヤーはしゃかりきになってパラメータを上げる。するとパラメータをトリガーにして女の子が山のように現れる。その山のように出てくる女の子の誰かを好きになってもいいし、藤崎詩織を目指してもいい。ともかくプレイヤーはモテすぎて、女の子に振り回される地獄の学園ライフを送り、そして女の子に告白される日を迎える。
微妙に今の人が思っている『ときメモ』と違うだろう。当たり前だ。
『ときメモ』は恋愛育成ゲームと呼ばれるジャンルが登場する前のゲームで、上記シナリオは企画者が想定した『ときメモ』のプレイ。
企画者達の描いた上記のプレイシナリオに、当時レビューをした僕はあっさりかかった。
だいたい雑誌に来た広報資料に「藤崎詩織にふさわしい男になるために3年間の高校生活で自分を鍛える」と書いてあったし、その他大勢のヒロインの事なんて一言も書いていなかった(マルチエンド程度は書いてあったはずだが、マルチエンドもプリンセスメーカー系では当たり前だ)。
だから本当に幼馴染の藤崎詩織を落とすために自分を鍛える『プリンセスメーカー』だと思ってプレイを始めたし、まさかパラメータの一つ一つに合わせてヒロインが設定されていて、山のようにいるなんて想像もしていなかった。
そして当たり前だが、パラメータは上げれば上げるほどいいのがゲームの常識だ。だいたい「才色兼備のパーフェクトヒロイン、藤崎詩織を落とせ」と言われているんだから、全パラメータ上げ倒せばいい、と思うに決まってる。で、パラメータを上げると、次から次へとヒロインが現れ、爆弾処理でグチャグチャになって、後半はデートを管理するために必死で目を血走らせる、とてもゲームとして面白いものになっていた。
後に、萌えゲーになったとき、オンリープレイと称して藤崎詩織を無視し、自分+好きな子だけ出てくるようにしてプレイするのが当たり前になったけれど、当時初めてプレイした人のほとんどは、この形でハマったと思う。
レビュワーをやっていたプロのプレイヤーだった僕が面白すぎてハマったぐらいなのだから、普通のプレイヤーなんかイチコロだったんじゃなかろうか…というか、イチコロじゃなきゃ、あんなに流行しない。そんなわけで市場として末期にあったPCエンジンとしては途方もない大ヒットをし(いま風にいうなら、ブログやgoogleの検索ランクで1位をぶっちぎりで走るような感じ)、その勢いでPS1版が発売されることになった。
さて。
恋愛育成ゲームと呼ばれるジャンルをフォーマットとして確立したのは、PCエンジン版ではなく、疑いもなくPS1版ときメモだ。
ついでに書くと、豪華な特典をつけて初回限定版を華々しくブチあげたのもPS1版が史上初ではないか…と思うのだが、それはともかくとして。
このフォーマットというのは、出会い系ヨロシク、もしくはキャバクラよろしく、ゲーム中に登場するヒロイン達をズラズラとカタログ形式で並べ、プレイヤーが「どれにしようかな」と選択できるようにしたという意味。
当たり前だが、『ときメモ』はPS1で発売されたときはネタバレしてたから、当時のヒロインの人気を逆用してアイドルみたいにして宣伝し、いわば擬似アイドル・擬似恋愛ものとして売った(実際にアイドルとして売ったキャラもいたじゃないか…という話はともかくとして)。
実際、そう売る以外方法がない状態だったけれど、これがモーレツに効果的だったもので、以降「多数のヒロインがいて、一部隠しヒロインを除いて、雑誌などで顔から性格からスリーサイズから紹介され、プレイヤーは俺はこの子に萌えるぜ! と目星をつけておく」スタイルが確立したわけだ。
そして、当時『ときメモ』PS1版は爆発的に売れ、一大ギャルゲーブームが来たんだけど、ここで大事なことが一つある。
当たり前だけど「他の女の子がいっぱいいる」のを知っていたら、最初に書いたプレイシナリオは成り立たなくなってしまう。だからPCエンジン版では情報がコントロールされていて、他キャラには他の子もいる程度にしか触れられていなかったし、もちろんそれらのキャラが全て等分にヒロイン扱いされていることなんて書かれていなかった。
つまりプレイヤーの大半は藤崎詩織を落とすつもりでプレイを始めて、他のキャラに萌えたのであって、一番最初からキャバクラか風俗のごとくカタログ化されている女の子を眺めて「俺はこの子と仲良くなるもんねー」という動機でゲームをスタートしてない。
そして、この「藤崎詩織を落とすつもりでプレイを始めた人たちが萌えた」熱狂なくして、ときメモのムーブメントを語る事はできない。
これが優れていたわけではない。もちろんゲームとして素晴らしく優れていたわけだが、それとはまったく別のレベルで、この手は初代だから通用した、たった一度だけのプリンセスメーカーだと言って違うものを食わせる、やり口としてはムチャな手品だ。
このあと出たゲームがどれだけ優れていようと、二度目から後はプレイヤーもネタを知っている。
隠したところで、ジャンルや雰囲気を見れば想像がつくから、隠してもほぼ意味は無い。だいたい雑誌にとって女の子のグラフィックは見栄えするから、恋愛育成ゲームは隠しキャラを除けば、出会い系サイトのノリで、全キャラがカタログ化されるのが当たり前だし、それの方が売り上げが伸びるチャンスは大きいのは間違いない。
つまりPCエンジン版ときメモの熱狂は、二度と起きることのない現象なのだ。
指摘があったので若干追記しておく。PCエンジン版ですら「情報なし」でプレイしたのは、最初の1ヶ月(ヘタをすると最初の1週間)以内に購入した、まさに文字通り、一番最初のプレイヤーだけだと思う。あと『ときメモ』のブームは非常に長く(ピークはPS1版発売後1年だと思うが)実に2年以上、圧倒的に人気のある期間があった。
そう考えたとき、ときメモPCエンジン版は、ウィザードリィが登場してRPGが確立した瞬間や、スペースインベーダが登場してシューティングが確立した瞬間と同じように、ゲームジャンルが登場した瞬間、ただ一回だけ起こる奇跡を目の前で見たのだろう。
そして、そのゲームのレビューを書けた偶然には、深く感謝しているのだった。
ちなみに、このあたりのことを書いた決戦前夜というタイトルの同人誌を10年ほど前に出したのを、このブログに再録してある。以下はそのリスト。
1994年4月19日19:06 NiftyServe
ニフティにアップロードした、発売前のROMでPCエンジン会議室にレビューする暴挙をやらかした書き込み。
決戦前夜(1) - 承前と1993年冬
決戦前夜(2) - 1994年春
決戦前夜(3) - レビュー、始まる
決戦前夜(4) - そして発売へ
決戦前夜(5) - 収縮~決戦前夜(終)
決戦前夜(6) - 追補
コメント
あーそうだったんですか。
ともかくあの時は、延長・延長でしかも後ろでは会食の予定もあって、かなりやばかったので、さすがにしゃべっている余裕もなくて。
またナニカの機会があったら、しゃべってみたいと思います。
ともかくあの時は、延長・延長でしかも後ろでは会食の予定もあって、かなりやばかったので、さすがにしゃべっている余裕もなくて。
またナニカの機会があったら、しゃべってみたいと思います。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/12/16 21:51 | Eeem.i3Y |
ニコ生でときメモの話をして欲しいと書き込みをしたものです。まさにこのブログの決戦前夜を読んでいて、これはニコ生見てる人たちにも知って欲しいなとの思いからコメントしました。もしまた機会があれば、どこかでお話されることを期待してます。
| hiro | EMAIL | URL | 10/12/16 14:17 | Z3FpMsUg |
決戦前夜でも書きましたけれど、もちろんときメモは当時としては、データ量やあらゆるものが他を圧するスーパーゲームでしたから、ネタバレしていても面白いゲームだったのです。
だから当時、PCエンジン版を遊べて、ゼンゼンいいと思います。(イベントグラフィックなどはPS1のが圧倒的にきれいですが)
ただ、あのタイトルにあの画面じゃ、当時のゲーマーなら、ひくのも当たり前ですよねえw
だから当時、PCエンジン版を遊べて、ゼンゼンいいと思います。(イベントグラフィックなどはPS1のが圧倒的にきれいですが)
ただ、あのタイトルにあの画面じゃ、当時のゲーマーなら、ひくのも当たり前ですよねえw
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/12/11 11:41 | 0GxDfQ/U |
電撃PCエンジンの新作紹介ページに初めて載った時は、画面写真も少なく地味だった印象が(藤崎詩織のアップくらい?)。その恥ずかしいタイトルも相まって、やはり私も「コナミどうしちゃったの?」と感じていました。
発売日にスルーしたことを、後で後悔することになったわけです。ムーブメントに乗れず残念。
あ、これから「決戦前夜」の再録、読ませていただきますね。
発売日にスルーしたことを、後で後悔することになったわけです。ムーブメントに乗れず残念。
あ、これから「決戦前夜」の再録、読ませていただきますね。
| Shin-QC | EMAIL | URL | 10/12/11 04:58 | Ohg8vgbg |
それは、情報出てからですよね。
PCエンジン版は発売されてから半年以上ムーブメントとしては続きましたんで、文としては若干不正確で「一番最初、発売日当日に買った人達」ということです。
PCエンジン版は発売されてから半年以上ムーブメントとしては続きましたんで、文としては若干不正確で「一番最初、発売日当日に買った人達」ということです。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/12/10 10:49 | Eeem.i3Y |
私もPCエンジン版ときメモをプレイしましたが、初めから片桐さん狙いでしたよ。
電撃PCエンジンの記事で興味を持ってから必死になって探して、ようやく中古ショップで買ったので、その頃にはすでに色々な情報が…
電撃PCエンジンの記事で興味を持ってから必死になって探して、ようやく中古ショップで買ったので、その頃にはすでに色々な情報が…
| Shin-QC | EMAIL | URL | 10/12/10 08:01 | Ohg8vgbg |
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