2017-08-16 Wed [ ゲームについて::理屈のこと ]
ビジネスモデルがゲームの形を決めている。
形というか、枠と言ってもいいかもしれない。
都度課金だったアーケードゲームの収益構造は 一日にプレイした人数×プレイ単価=売り上げ だ。
プレイ単価は主に100円で固定されているし、一日は最大でも24時間しかない。
だから、一度のプレイタイムが一定以下でないと、売り上げが出ないことになる。
分かりやすい例を書くと、あるプレイヤーが朝に100円入れて、閉店までプレイしていれば売り上げは100円。これではゲームセンターの商売あがったりだ。
だから100円払って時間制限がないゲームではともかく一定時間以下でゲームオーバーに持ち込むことが必須になる。
わかりやすい書き方をするなら、プレイするに従って難易度を上げるが解になる。プレイをするに従って難易度が上がるのは、ゲームの構造ともよくあっていて、基礎から始まり応用に進む学習の基本形なので、大変に構造的にマッチしやすいことから、シングルゲームの主流になった。
ところがジャンルが続くにしたがって、プレイヤーの基礎知識が増え、プレイ継続技術が向上するので、インカム(収入)を上げるためには難易度を上げざるを得なくなる。つまりジャンルのマニア化が進む。
この問題を回避したければ時間制限のあるゲームか(カーレースが典型)、一定の短い時間で終了するゲーム(音ゲーが典型)、それとも対戦格闘(ラウンド+時間制)という話になる。
つまり都度課金において、シングルゲームの難易度が上がるのは必然だったし、時間制限なしのゲームが廃れていくのもビジネスモデルを考えれば、どうしようもないことがわかる。
都度課金が当たり前で、対戦ゲームや時間制限型ではなく、難易度があがる形式が主流だった70年代末から80年代前半に買い切りゲームがパソコンと家庭用ゲームマシンで登場する。
どちらもパッケージを販売する買い切りモデルだ。
初期には買い切りゲームに当時のアーケードゲーム、すなわち都度課金型ゲームが移植され、最初のうちは人気を博する。これはアーケードの方が圧倒的に性能が高く、かつ認知度もあったのだから当たり前だ。
だが都度課金型ゲームを買い切りゲームに持っていくと「クリアできない」、「短時間しか遊べない」、「うまくなると最初のうちがかったるい」といった問題にぶつかる。
また買い切りゲームは(大雑把には)価格が固定されているので、プレイタイムが伸びると単位時間当たりののコストが下がる特性があり、そして 値段÷プレイタイム=コストパフォーマンス と考えるユーザーが多い(全く当たり前だと思う)。
だから作り手側には強烈にプレイタイムを伸ばすインセンティブが働く。ところがプレイタイムを伸ばすと、都度課金型の電源を入れると最初からスタート型だと「同じことを何度もやらされる」、「うまくなると最初のうちかったるい」という問題はあまりに痛いので、進行が保存できるゲームが好まれるし、むしろ必須になっていく。
またプレイタイムが伸びる=プレイ時間を埋めることが必要だし、難易度を無限に上昇させてクリアできないのも問題がある。
なので難易度調整としての成長メカニクス、アイテムを集める(コレクション要素)、長大化したプレイタイムを納得させるためのストーリーなどが追加される。具体的には長期間にわたってプレイ可能なシナリオが入ったゲームだ。
つまりRPGやシミュレーションゲームなど現在の買い切りゲームの主流のジャンルは買い切りゲームに適応したジャンルだから主流なのだ。
さて、モデムの価格が安くなり、インターネットの普及と相まって、1990年代末になって本格的なオンラインゲーム時代の幕が上がる。
オンラインゲームは初期は「支払い」に困難があった(特に少額決済)し、回線速度にも問題があったので、買い切り型の小さな安いゲーム(つまりオンラインからダウンロードしてそれっきり。i-mode初期などに多数あった)と、パッケージで発売されていたクライアントを購入してサーバーと通信してゲームをするMMOやMOの月額課金形式から世代は始まると考えていい。
これがダウンロードの高速化などもあり、たちまちクライアントは「無料」ダウンロードになり、月額課金をユーザーが払ってくれなくなって、2001年ごろから「基本プレイ無料」が登場する。
スマートフォンのようにいつでも身近に持っているデバイスで、ダウンロードのみでスタートできるゲームは極端にプレイ障壁が低いので、ともかく沢山の人数にプレイしてもらうためにはクライアントコストをゼロに下げるのが一番望ましいことになる。そこで基本プレイ無料で広告による回収・アイテム課金による回収といったモデルが成り立ちうる。そしてプレイ時のコストは低い方が競争には有利に決まっているので、F2Pになるのは必然と言っていいことになる(これは、僕の嫌いなアンダーソンが書いている「FREE!」とは全く意味が違うのに注意w)。
また他人と競争するバトルするといったことが簡単になるので、昔より長大なストーリーに対する要求は下がる。
加えて同じ買い切りモデルでも、オンライン時代では配信コストが極端に安く、また実質的にコストをほぼゼロで店頭に並べておくことが可能という特性があるので、インディーゲームのような少人数で個性的な作品を作るやり方、さらに買い切りのメディアがあった時代には失敗し続けたエピソディカル販売(一本の作品をエピソードに分割して販売するモデル)などを可能にした。
ここが現在だ。
つまるところ、ゲームの形(枠)を決めたり変えてきたのはビジネスモデル、ということだ。
ゲームを作る人は「現在のビジネスモデル」を強く意識するべきだと思うのだ。
突然、なんでこんなことを書いたのかといううと、最近、若いフランスのゲームデザイナーにアーケードからの変遷を説明する機会があり、上の歴史は世界各所で起こっていたことで、これを一貫して説明されたことがなかったというので、今回はブログの記事にしてみたわけである。
ところでもう一個、ゲームの形を決定づける大きな要素に技術があるのだけど(通信、すなわちオンゲーもそっちに半分は入っているが)、今回はめんどいのでそっちは省いた。
また気が向いたら書くかもしれない。
形というか、枠と言ってもいいかもしれない。
都度課金だったアーケードゲームの収益構造は 一日にプレイした人数×プレイ単価=売り上げ だ。
プレイ単価は主に100円で固定されているし、一日は最大でも24時間しかない。
だから、一度のプレイタイムが一定以下でないと、売り上げが出ないことになる。
分かりやすい例を書くと、あるプレイヤーが朝に100円入れて、閉店までプレイしていれば売り上げは100円。これではゲームセンターの商売あがったりだ。
だから100円払って時間制限がないゲームではともかく一定時間以下でゲームオーバーに持ち込むことが必須になる。
わかりやすい書き方をするなら、プレイするに従って難易度を上げるが解になる。プレイをするに従って難易度が上がるのは、ゲームの構造ともよくあっていて、基礎から始まり応用に進む学習の基本形なので、大変に構造的にマッチしやすいことから、シングルゲームの主流になった。
ところがジャンルが続くにしたがって、プレイヤーの基礎知識が増え、プレイ継続技術が向上するので、インカム(収入)を上げるためには難易度を上げざるを得なくなる。つまりジャンルのマニア化が進む。
この問題を回避したければ時間制限のあるゲームか(カーレースが典型)、一定の短い時間で終了するゲーム(音ゲーが典型)、それとも対戦格闘(ラウンド+時間制)という話になる。
つまり都度課金において、シングルゲームの難易度が上がるのは必然だったし、時間制限なしのゲームが廃れていくのもビジネスモデルを考えれば、どうしようもないことがわかる。
都度課金が当たり前で、対戦ゲームや時間制限型ではなく、難易度があがる形式が主流だった70年代末から80年代前半に買い切りゲームがパソコンと家庭用ゲームマシンで登場する。
どちらもパッケージを販売する買い切りモデルだ。
初期には買い切りゲームに当時のアーケードゲーム、すなわち都度課金型ゲームが移植され、最初のうちは人気を博する。これはアーケードの方が圧倒的に性能が高く、かつ認知度もあったのだから当たり前だ。
だが都度課金型ゲームを買い切りゲームに持っていくと「クリアできない」、「短時間しか遊べない」、「うまくなると最初のうちがかったるい」といった問題にぶつかる。
また買い切りゲームは(大雑把には)価格が固定されているので、プレイタイムが伸びると単位時間当たりののコストが下がる特性があり、そして 値段÷プレイタイム=コストパフォーマンス と考えるユーザーが多い(全く当たり前だと思う)。
だから作り手側には強烈にプレイタイムを伸ばすインセンティブが働く。ところがプレイタイムを伸ばすと、都度課金型の電源を入れると最初からスタート型だと「同じことを何度もやらされる」、「うまくなると最初のうちかったるい」という問題はあまりに痛いので、進行が保存できるゲームが好まれるし、むしろ必須になっていく。
またプレイタイムが伸びる=プレイ時間を埋めることが必要だし、難易度を無限に上昇させてクリアできないのも問題がある。
なので難易度調整としての成長メカニクス、アイテムを集める(コレクション要素)、長大化したプレイタイムを納得させるためのストーリーなどが追加される。具体的には長期間にわたってプレイ可能なシナリオが入ったゲームだ。
つまりRPGやシミュレーションゲームなど現在の買い切りゲームの主流のジャンルは買い切りゲームに適応したジャンルだから主流なのだ。
さて、モデムの価格が安くなり、インターネットの普及と相まって、1990年代末になって本格的なオンラインゲーム時代の幕が上がる。
オンラインゲームは初期は「支払い」に困難があった(特に少額決済)し、回線速度にも問題があったので、買い切り型の小さな安いゲーム(つまりオンラインからダウンロードしてそれっきり。i-mode初期などに多数あった)と、パッケージで発売されていたクライアントを購入してサーバーと通信してゲームをするMMOやMOの月額課金形式から世代は始まると考えていい。
これがダウンロードの高速化などもあり、たちまちクライアントは「無料」ダウンロードになり、月額課金をユーザーが払ってくれなくなって、2001年ごろから「基本プレイ無料」が登場する。
スマートフォンのようにいつでも身近に持っているデバイスで、ダウンロードのみでスタートできるゲームは極端にプレイ障壁が低いので、ともかく沢山の人数にプレイしてもらうためにはクライアントコストをゼロに下げるのが一番望ましいことになる。そこで基本プレイ無料で広告による回収・アイテム課金による回収といったモデルが成り立ちうる。そしてプレイ時のコストは低い方が競争には有利に決まっているので、F2Pになるのは必然と言っていいことになる(これは、僕の嫌いなアンダーソンが書いている「FREE!」とは全く意味が違うのに注意w)。
また他人と競争するバトルするといったことが簡単になるので、昔より長大なストーリーに対する要求は下がる。
加えて同じ買い切りモデルでも、オンライン時代では配信コストが極端に安く、また実質的にコストをほぼゼロで店頭に並べておくことが可能という特性があるので、インディーゲームのような少人数で個性的な作品を作るやり方、さらに買い切りのメディアがあった時代には失敗し続けたエピソディカル販売(一本の作品をエピソードに分割して販売するモデル)などを可能にした。
ここが現在だ。
つまるところ、ゲームの形(枠)を決めたり変えてきたのはビジネスモデル、ということだ。
ゲームを作る人は「現在のビジネスモデル」を強く意識するべきだと思うのだ。
突然、なんでこんなことを書いたのかといううと、最近、若いフランスのゲームデザイナーにアーケードからの変遷を説明する機会があり、上の歴史は世界各所で起こっていたことで、これを一貫して説明されたことがなかったというので、今回はブログの記事にしてみたわけである。
ところでもう一個、ゲームの形を決定づける大きな要素に技術があるのだけど(通信、すなわちオンゲーもそっちに半分は入っているが)、今回はめんどいのでそっちは省いた。
また気が向いたら書くかもしれない。
コメント
お返事ありがとうございます、参考にさせていただきます。
あと、ROのオープンベータ時代くらいから、それらベータに
(世間的には)完成度が負けている正式スタートのネトゲを
「有料ベータ」と呼ぶ風潮があった気がします。
で、それなら「期待の案件のベータやる権利を本当に300円とかで売ったらどうよ?」
「なんならそれを(当時ロクな景品がなかった)ポイントサイトの交換対象にするとかどうよ?」
「メーカーは初期資金少しでも回収できる、ポイントサイトは目玉&小ポイントで交換できる景品用意できてどっちも得だよね、ゲーマーで新規会員釣れるし。」
実際K社のPGに酒の肴に話してみましたが、
儲けの匂いがしなかったか、プレゼンスキルがなかったせいか(それとも酔ってたか)相手はピンとこなかったようです。
いずれにしても昔の話ですが・・・。
あと、ROのオープンベータ時代くらいから、それらベータに
(世間的には)完成度が負けている正式スタートのネトゲを
「有料ベータ」と呼ぶ風潮があった気がします。
で、それなら「期待の案件のベータやる権利を本当に300円とかで売ったらどうよ?」
「なんならそれを(当時ロクな景品がなかった)ポイントサイトの交換対象にするとかどうよ?」
「メーカーは初期資金少しでも回収できる、ポイントサイトは目玉&小ポイントで交換できる景品用意できてどっちも得だよね、ゲーマーで新規会員釣れるし。」
実際K社のPGに酒の肴に話してみましたが、
儲けの匂いがしなかったか、プレゼンスキルがなかったせいか(それとも酔ってたか)相手はピンとこなかったようです。
いずれにしても昔の話ですが・・・。
| 蝉職人 | EMAIL | URL | 17/09/06 20:27 | ClQ4cksw |
書くと超長くなるのですが、F2Pにおいて「完全無料」、すなわち広告ですべてをまかなうモデルが実際にあります。
ただし広告で得られる金額は一般的には非常に小さいので、完全無料モデルが適用できるゲームのサイズや内容には厳しい制限がある、と考えてもらうのが正しいかと思います。
具体的な例はKetchappなどの海外の「バイトサイズ」と言われるゲームを見ていただくのがいいでしょう。
ただし広告で得られる金額は一般的には非常に小さいので、完全無料モデルが適用できるゲームのサイズや内容には厳しい制限がある、と考えてもらうのが正しいかと思います。
具体的な例はKetchappなどの海外の「バイトサイズ」と言われるゲームを見ていただくのがいいでしょう。
| いわさき | EMAIL | URL | 17/09/06 08:53 | SH6UwLUg |
大昔(2000~2001年頃)から不思議だなあと思うのは
「月額無料でも運営できるネトゲは出来ないのか?」
という事でした。
自分がネットをやり始めた当時、無料プロバイダや
各種ポイントサイトの存在を知ってからずっとそれを
ネトゲに転用できないのかと考えてました。
まぁ無料プロバイダはWEB広告の単価の都合で滅んだんですが。
現状のF2Pでも重課金が社会問題化して、
無課金勢がなかなか課金してしてくれない中で、
「無課金勢に課金させる努力」よりも「大量の無課金勢を使ってカネを産む」方が率が良いんじゃ?と今でも思ってます。
所詮ゲーム業界には関わった事もない素人のクダ巻きですが
「月額無料でも運営できるネトゲは出来ないのか?」
という事でした。
自分がネットをやり始めた当時、無料プロバイダや
各種ポイントサイトの存在を知ってからずっとそれを
ネトゲに転用できないのかと考えてました。
まぁ無料プロバイダはWEB広告の単価の都合で滅んだんですが。
現状のF2Pでも重課金が社会問題化して、
無課金勢がなかなか課金してしてくれない中で、
「無課金勢に課金させる努力」よりも「大量の無課金勢を使ってカネを産む」方が率が良いんじゃ?と今でも思ってます。
所詮ゲーム業界には関わった事もない素人のクダ巻きですが
| 蝉職人 | EMAIL | URL | 17/09/02 16:53 | ClQ4cksw |
一人に一台になったのは「結果として」販売数の増加位に繋がりましたが、それはパソコンという環境であり、スマホという環境というものが出来たのが理由ですね。
ちなみに僕が一番好きなのはアーケード時代の横スクロールシューティングの世界で、それの近代形としてのRESOGUNとかこよなく愛してたりします。
ちなみに僕が一番好きなのはアーケード時代の横スクロールシューティングの世界で、それの近代形としてのRESOGUNとかこよなく愛してたりします。
| いわさき | EMAIL | URL | 17/08/17 20:40 | DQpMA17Y |
面白かったです。
中心になる環境がゲーセン→家庭用→スマホと移っているのも店舗に一台→一家に一台→一人に一台と考えれば販売数増加目的って事なんですね。
中心になる環境がゲーセン→家庭用→スマホと移っているのも店舗に一台→一家に一台→一人に一台と考えれば販売数増加目的って事なんですね。
| | EMAIL | URL | 17/08/17 15:16 | b/Hbsjr6 |
なるほどなぁ…と思いました。
同時にこのような背景を無視して今時のゲームはどうの、昔はこうだっただのと偉ぶるのは滑稽だなと感じますね。
私も昔の方が良かった派ですが、好き嫌いと現実は分けて考えるものです。まあ最近はドラクエビルダーズや11が非常に面白かったので、家庭用ゲーム復活の狼煙になると良いですねぇ。
同時にこのような背景を無視して今時のゲームはどうの、昔はこうだっただのと偉ぶるのは滑稽だなと感じますね。
私も昔の方が良かった派ですが、好き嫌いと現実は分けて考えるものです。まあ最近はドラクエビルダーズや11が非常に面白かったので、家庭用ゲーム復活の狼煙になると良いですねぇ。
| wx | EMAIL | URL | 17/08/17 14:56 | NgT9rM8g |
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