2016-04-29 Fri [ ゲームについて::歴史のこと ]
さて。
ロー・アダムズ(正確には Roe. R. Adams IIIで、ロー・R・アダムズ3世っていう、日本人からすると大層に感じるのが本名。以降はローと書く)が、ゲームの世界で活躍したのは1979年ごろから始まり1990年代初頭まで。
というのも、1989年にウッドヘッド(Wizardryの作者の一人)と立ち上げたanimeigoという、日本のアニメに字幕をつけて売ったりする会社がメインの仕事になってしまい、90年代半ばからは、ゲームとのかかわりは薄くなってしまうからだ(今でもanimeigoにいるらしい)。
ではローは何をやったのか?
ローの最大の功績は、現代につながるゲームの中での近代的なシナリオ構造を確立したことに尽きる。
今のゲームではごく当たり前になっている、CRPGでシナリオを語る方法を、ローはUltima IV Quest for Avatar(1985/Apple II) で決定的な形でプレゼンテーションして確立して、ともかく彼が確立した形があまりに決定的だったもので、以降のあらゆるCRPG…というか、まあちょっとでもマップとナゾがあるようなゲームなら、必ず使われる代物になっているのだけど、前の記事でもちょっと書いたけれど、ローがやったことがなんだったのかが、あまり知られていないので、90年代前半に故・多摩豊さんとともに聞いたローの話を、彼がUltima IVより前に何をやっていたのか、どうしてあんなゲームにしたのかまで含めて、自分が覚えている限り書いておこうというわけである。
なお、それなりに資料で確認して補強はしているけれど、自分が聞いた(とおぼえている話)と資料が食い違っているときは、アメリカの資料の場合にはアチラの方が自分の記憶より精度が高いってことで、資料に書いてあることを優先している…のだけど、そもそも資料に複数の説があったりするので、そんなときは、できるだけ複数の説を書くようにしている。
そもそもローは何をやっていた人なのか?
アメリカに昔あったソフトークというコンピュータ雑誌のライターで、なおかつ有名なゲーマーだった。正確にはライターだったのか、それとも編集者だったのかはよく知らないのだけど、ともかく名うてのゲーマーでレビュワーだったのは、アメリカで古いゲームの歴史に関して調べていると割と"Roe R. Adams"が書いたレビュー記事などにあたることがあるのだから、そこは間違いないだろう。
(日本でも遊撃手って古い雑誌にソフトークのローの記事が翻訳されたことがある)
そして、ローのゲームを解く能力、特にアドベンチャゲーム(当時なのでテキストを入力するアドベンチャゲーム)を解く能力は途方もなかった…というか、想像を絶していた。
それを買われてか知らないが、彼は当時infocomのテストプレイヤーもやっていたのだが…
ローはinfocomの"Deadline"(1982)というゲームのテストプレイをしたとき、驚くべきことにゲームを5分でクリアし、ローの言葉によれば「目の前で見た制作スタッフは絶句して、部屋から出て家に帰ってしまって、帰ってこなかったよ」というコトをやらかすのである。
ここで説明しておくと、"Deadline"というゲームは、一見事故に見える殺人事件を解き明かす推理アドベンチャゲームだ。
特徴として、時間の概念が非常にはっきりあり(Time Trackと呼ばれていた)、何かの行動をするたびに時間が経ち、全NPCが時間に従って行動し、さらにプレイヤーは12時間以内に謎を解かなければならない…という、非常にとんでもない難易度のゲームで、当時、僕は解けなかった。
なおこれはinfocomのZORKでない最初のアドベンチャゲームなので、そういう意味でも大事なゲームなのだけど、これをどうして5分で解けたのか?
とても信じられなくて「どうして解けたんだ!?」と彼に聞いたとき、彼はこう答えた。
「タイムラインでキャラクタが動くことは説明されていた」
「ハアハア」
「次に考えた。これはテーマは密室殺人だ。ということは、この部屋を密室にしたなんらかのトリックがあるはずだ」
「ハアハア」
「この部屋は密室なのだから、そのトリックの証拠はここにあるはずだ。そして犯人はそれを隠滅する必要があるはずだ」
「ハアハア」
「だから部屋で待った。予想通り犯人が来て、証拠を持った。捕まえた。ゲームエンド」
「…」
まあ…これでちゃんと解けるゲームを作る、ものすごくフェアなインフォコムも偉いのだけど、それでもこれで解かれたら、そりゃあ僕だって、その日は家に帰って酒飲んで寝てしまうよ。
こんな謎解きをできてしまうローで、しかも文章も書けるんだから、そりゃあ「ゲームのことならローに聞け」と言われるぐらい有名にもなるのもわかる。で、ゲームのシナリオも書けそうだ…というわけで、シナリオの話が2つやってくる。
それが"Ultima IV"と"Wizardry IV"。
というところで、次回に続く。
ロー・アダムズ(正確には Roe. R. Adams IIIで、ロー・R・アダムズ3世っていう、日本人からすると大層に感じるのが本名。以降はローと書く)が、ゲームの世界で活躍したのは1979年ごろから始まり1990年代初頭まで。
というのも、1989年にウッドヘッド(Wizardryの作者の一人)と立ち上げたanimeigoという、日本のアニメに字幕をつけて売ったりする会社がメインの仕事になってしまい、90年代半ばからは、ゲームとのかかわりは薄くなってしまうからだ(今でもanimeigoにいるらしい)。
彼とウッドヘッドは大変な日本アニメのファンで、それを本業にしてしまったわけである。
ちなみにローに「なんの日本アニメにハマったんだ?」と聞いたら、彼は"Star Blazers"、初代の『宇宙戦艦ヤマト』のアメリカ版だと言っていた。見て「マジ感動した」と言ってた
ちなみにローに「なんの日本アニメにハマったんだ?」と聞いたら、彼は"Star Blazers"、初代の『宇宙戦艦ヤマト』のアメリカ版だと言っていた。見て「マジ感動した」と言ってた
ではローは何をやったのか?
ローの最大の功績は、現代につながるゲームの中での近代的なシナリオ構造を確立したことに尽きる。
今のゲームではごく当たり前になっている、CRPGでシナリオを語る方法を、ローはUltima IV Quest for Avatar(1985/Apple II) で決定的な形でプレゼンテーションして確立して、ともかく彼が確立した形があまりに決定的だったもので、以降のあらゆるCRPG…というか、まあちょっとでもマップとナゾがあるようなゲームなら、必ず使われる代物になっているのだけど、前の記事でもちょっと書いたけれど、ローがやったことがなんだったのかが、あまり知られていないので、90年代前半に故・多摩豊さんとともに聞いたローの話を、彼がUltima IVより前に何をやっていたのか、どうしてあんなゲームにしたのかまで含めて、自分が覚えている限り書いておこうというわけである。
なお、それなりに資料で確認して補強はしているけれど、自分が聞いた(とおぼえている話)と資料が食い違っているときは、アメリカの資料の場合にはアチラの方が自分の記憶より精度が高いってことで、資料に書いてあることを優先している…のだけど、そもそも資料に複数の説があったりするので、そんなときは、できるだけ複数の説を書くようにしている。
そもそもローは何をやっていた人なのか?
アメリカに昔あったソフトークというコンピュータ雑誌のライターで、なおかつ有名なゲーマーだった。正確にはライターだったのか、それとも編集者だったのかはよく知らないのだけど、ともかく名うてのゲーマーでレビュワーだったのは、アメリカで古いゲームの歴史に関して調べていると割と"Roe R. Adams"が書いたレビュー記事などにあたることがあるのだから、そこは間違いないだろう。
(日本でも遊撃手って古い雑誌にソフトークのローの記事が翻訳されたことがある)
そして、ローのゲームを解く能力、特にアドベンチャゲーム(当時なのでテキストを入力するアドベンチャゲーム)を解く能力は途方もなかった…というか、想像を絶していた。
それを買われてか知らないが、彼は当時infocomのテストプレイヤーもやっていたのだが…
infocomはテキストアドベンチャゲームの巨人。
MITでZORKというアドベンチャゲームを作り出したデーブ・レベリング達によって創業された会社。
MITで作られたZORKが1-2-3の3部作に分割されて発売され、アドベンチャゲームの歴史における極めて重要なメルクマークの一つとなっている。
またZORKはテキストアドベンチャでありながら、経験値を持っている点でも歴史的に重要で、アドベンチャがTRPGから分岐した物であることを如実に示す一例になっている。
MITでZORKというアドベンチャゲームを作り出したデーブ・レベリング達によって創業された会社。
MITで作られたZORKが1-2-3の3部作に分割されて発売され、アドベンチャゲームの歴史における極めて重要なメルクマークの一つとなっている。
またZORKはテキストアドベンチャでありながら、経験値を持っている点でも歴史的に重要で、アドベンチャがTRPGから分岐した物であることを如実に示す一例になっている。
ローはinfocomの"Deadline"(1982)というゲームのテストプレイをしたとき、驚くべきことにゲームを5分でクリアし、ローの言葉によれば「目の前で見た制作スタッフは絶句して、部屋から出て家に帰ってしまって、帰ってこなかったよ」というコトをやらかすのである。
ここで説明しておくと、"Deadline"というゲームは、一見事故に見える殺人事件を解き明かす推理アドベンチャゲームだ。
特徴として、時間の概念が非常にはっきりあり(Time Trackと呼ばれていた)、何かの行動をするたびに時間が経ち、全NPCが時間に従って行動し、さらにプレイヤーは12時間以内に謎を解かなければならない…という、非常にとんでもない難易度のゲームで、当時、僕は解けなかった。
なおこれはinfocomのZORKでない最初のアドベンチャゲームなので、そういう意味でも大事なゲームなのだけど、これをどうして5分で解けたのか?
とても信じられなくて「どうして解けたんだ!?」と彼に聞いたとき、彼はこう答えた。
「タイムラインでキャラクタが動くことは説明されていた」
「ハアハア」
「次に考えた。これはテーマは密室殺人だ。ということは、この部屋を密室にしたなんらかのトリックがあるはずだ」
「ハアハア」
「この部屋は密室なのだから、そのトリックの証拠はここにあるはずだ。そして犯人はそれを隠滅する必要があるはずだ」
「ハアハア」
「だから部屋で待った。予想通り犯人が来て、証拠を持った。捕まえた。ゲームエンド」
「…」
まあ…これでちゃんと解けるゲームを作る、ものすごくフェアなインフォコムも偉いのだけど、それでもこれで解かれたら、そりゃあ僕だって、その日は家に帰って酒飲んで寝てしまうよ。
こんな謎解きをできてしまうローで、しかも文章も書けるんだから、そりゃあ「ゲームのことならローに聞け」と言われるぐらい有名にもなるのもわかる。で、ゲームのシナリオも書けそうだ…というわけで、シナリオの話が2つやってくる。
それが"Ultima IV"と"Wizardry IV"。
というところで、次回に続く。
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