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桝田方式によるユーザーストーリーの作り方(4.5)
パート(1)
パート(2)
パート(3)
パート(4)

恐ろしく間が開いてしまったのだけど、シリーズの続き。
ところで間が開いたのと、シリーズが長くなってきたので、議論の筋道を見失う人もいるだろうから、ここで一旦整理しておきたい。

まず独自用語、ユーザーストーリーの定義。
ユーザーストーリーとはプレイヤーが全く素人の状態から、エンドユーザーに至るまでゲームメカニクスを覚えていくプロセスを記述したものと理解するとわかりやすい。

手っ取り早く書けば、どんな風にユーザーはエンドユーザーになるのか?を記述したのがユーザーストーリーってことだ。

僕について書くなら、もともとは、26年ほど前に桝田さんから聞いたゲームバランスの取り方を発展・改良した方法だが、多分、当時のゲームを作っていた人間たちの間で、同時並行的に完成した技術だったのだろうと想像している。


また、このユーザーストーリーは1つのゲームの中で複数成り立ち得る…と言うか、成り立っていることが多いのに注意して欲しい。
具体的には、だいたい1つのコンテンツに対して1つのユーザーストーリーを書き得る
だからたいていサブストーリーもユーザーストーリーになりえるし、やりこみ要素もユーザーストーリーとして独立して書くことが出来る。
MMOでの生産系はメインとは全く違うユーザーストーリーを書くことが出来、かつゲームによってはそれがレベルを上げてエンドユーザーになるバトルコンテンツとは全く別のもう一つのメインコンテンツと言えることもよくある。

というように、ゲームには様々なユーザーストーリーが含まれるが、このシリーズでは単純化して「1つのユーザーストーリーしかない」状況を扱っている。

というわけで、以下、本論。

標準的なRPGメカニクスでは、レベルが上がるに従って、次のレベルになるのに時間がかかるようになる。
すなわち、ユーザーストーリーをレベルにマップすると、イベント(ゲーム上でユーザーが嬉しくなる特別なこと、とでも定義しておく)がレベルに紐つけられるので、レベルが上がるに従ってイベント間隔が間延びしていくことになる。
もちろん、イベント間隔が間延びしていくのは望ましくない。だから、標準的なRPGメカニクスが採用されているとするなら、イベント間隔を一定以下(例えば10時間以下とか)に保つためには、レベルが上がるに従ってレベル差を狭くしなければならない

ところが、そういう設計をしようとすると、今度は成長しない問題が起こる。
低レベルのうちはパラメータが小さいので、レベルが1上がると10%単位でパラメータが跳ね上がる。だからレベルが1違えば、十分に強さが違う(例えばパラメータ1→2は2倍。10→11でも10%のアップ)ので、イベントの難易度に大きな違いを設けられる。またレベル間のプレイタイムも短いので、強烈な成長感を感じられる。
ところがレベルが上がるに従ってパラメータは大きくなる。パラメータの母数が大きくなると、少々パラメータが向上しても、大きな差は生じない。例えばパラメータ99→100は、1%で、前述の10→11の増加率の1/10になってしまう。
つまりレベルが上がるに従って、相対的に成長率は低下する。これはRPGメカニクスの宿命だ。
だから高レベル帯でパラメータ差でイベント難易度を設定すると、レベルを10とか離さないとレベル差による難易度調整機能しない
つまりイベント間隔を詰めると、成長していない=パラメータ差がないために、イベントで設定できる障害の難易度が似たようなものになる問題がある。

コンソールRPGで、最終武器を獲得するのに「ミスター最終兵器を手に入れるためには、5つの不思議なアイテムが必要であり、その5つはすべて別々のダンジョンに鎮座しており、それぞれは隠されているという…5つのアイテムを手に入れるために、全世界を探すのじゃ勇者よ!(ただしヒントはなし)」なんてなるのは、この似たような難易度にならざるを得なく、かつレベルアップに手間がかかる問題を回避するために他ならない。世界が広がって船に乗ってあちこちに行ける時、どこにいっても似たような難易度になる理由もそれだ。
そして僕が最も愛するRPGの1つ、FF10は、ほぼ一本道なので、この似た難易度になる問題と露骨にぶつかっており、一定までキャラクタを育てるとザコと一切戦闘せずに最終ボスまで倒せてしまう。


ここでまとめよう。

RPGメカニクスを持つゲームは、プレイタイムが一定間隔でイベントが起こるように時間をベースにユーザーストーリーをマッピングするとレベルが上がるに従って難易度が似たものになってしまう問題が発生し、逆にレベルでマッピングすると今度はレベルが上がるに従って、イベントの間がとんでもなく間延びするようになる。

と、このような問題が発生するわけだ。

これをどのよう解決すれば、適正なユーザーストーリーのマッピングが可能なのか?
属性などのパラメータを追加するのが1つの方法だと説明した。
わかりやすい書き方をするなら、雷の魔法だの炎の魔法だのを追加するわけだ。
どうしてこれが答えになるのか?
属性を追加すると成長の軸が1つではなくなる。例えば、雷の属性と魔法が存在するような方式で作れば、属性値の成長(新しい魔法を覚える・魔法攻撃力がアップする)があることになり、軸が一つでなくなる。ありがちな4つぐらいの属性を入れれば通常の物理攻撃以外に4つの軸が存在することになり、成長感の維持が大幅に伸びるわけだ。
ところがこの方法には1つ大きな欠陥がある。
成長軸が複数あるということは、そもそものゲームが複雑だって話になる。そしてスーパーカジュアルまで幅広くユーザーになってもらうことが前提になることが多いF2Pの世界では複雑性はいただける話とは言いがたい
加えて属性を入れても属性が機能しなければ意味はない。だからいわゆる属性ジャンケン(属性のNすくみ)のような仕様を入れざるをえないのだけど、これを入れるとバランスを取るのが難しくなるし、もちろんゲームも複雑化する。
しかも、属性が軸として増えても、あくまで成長感を長持ちさせることが出来るだけで、属性は母数問題が影響するので、結局のところRPGメカニクスの問題に縛られている。

では、もうちょっと都合がいいモノがないのか?
装備を作ることで、強さが派手にジャンプするように作ればいい…そしてこれは海外のF2Pでよく使われる"Progression Wall"による課金にも使えるんだよ…と書いた所までが、前回までの話になる。

で、次回からは装備をユーザーストーリーに組み込む方法を解説していくことになるが…ここでちょっと書いておきたいが、RPGメカニクスでの母数問題を越えて成長感を維持するためには、前回書いた技術以外にもイロイロな方法がある。

例えば…

●レベル差で補正をかける
(天外2で少しやった。有名な例ではFF11なんかがやっている)
●パラメータの「差」や比で戦闘を組み立てていく
(ボードシミュレーションゲームの戦闘結果とかによく使われている/いた)
●パラメータに対数などの関数で補正を入れて、数字が大きくなるにつれて補正が入るようにする
(あちこちのゲームで使われている)
●最初から一定以上のケタ数になるようにして母数をコントロールしやすくする
(中国のCRPGでよく使われる手)
●複数のパラメータの成長曲線をコントロールして、常にどれかのパラメータは成長感が維持できるようにする。
(使ったことがある)

などなど、それこそ真砂の数ほどにもバトルのバランスの取り方はあるし、加えて書くとパラメータ成長の組み立て方にもいっぱいあるが、例えば対数を使うと、使い方によってはあるレベル以上が破綻する、レベル差での補正はレベル差を腕でカバーする面白さを簡単に破壊するので特にアクションなどでは致命傷になる、比で作れば桁が大きいときも小さい時も結果が変わらない(300:100と、3:1の結果がおなじになる。これを解決する方法ももちろんあるが、それまた違う問題を引き起こす)、桁数が大きくなると「なんだかよくわからない数字」になる…などなど、どんな方法もどこかに弱点があって、これを使えば無敵って方法はない。

結局、ゲームごとにある条件を満たした「何か」を必ず考えることになる。
だから、ゲームに則したパラメータやいろいろな設計を適切に行うことが、ゲームデザイナーの最も面倒くさいけど、大事な仕事の1つなのである。

というところで、次回に続くのであった。
続けば。
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