2015-01-17 Sat [ ゲームについて::理屈のこと ]
■パート(1)
■パート(2)
コンソールでドラクエ1みたいな古典的なRPGを作っているとする。
パート1で、この設定をして、桝田方式のユーザーストーリーの組み立て方をした時、TNL=戦闘回数とした場合には約37時間ほどでメインストーリーがクリアされる設定になっていることがわかった(まあ2つ目は意味ないけど)。
ここでユーザーストーリー(しつこいようだが僕の独自用語である)をこんな風に決定していたとしよう。
上記のようにゲームの中身で教えたいことを、なんらかの形でゲームのリソースやパラメータと結びつけて並べる作業を、僕はストーリーマッピングと呼んでいる。
上記内容は、雑すぎで、これを部下が出してきたら「ハ? この素案はどういう意図があんのか説明してくれる?」とか聞くけれど、例示ってことで許していただきたい。
また、ラスボスと遭遇・チュートリアル終了以外は全部5レベル単位にしているのは、ストーリーマッピングしてみる題材としての目安として意味があるからなので、これは意図的なものだ。
ここで、初代ゲーム名人、また史上初のプロゲーマーと呼んで良い、高橋名人の言葉に従って、ゲームは一日1時間ということにしよう。
するとこのゲームはクリアするまで約37日かかるゲームって話になる。
意識して欲しいが、37日は1ヶ月以上だ。つまりプレイヤーを1ヶ月の間、惹きつけるコンテンツを用意しなければならない。
では、それができているのか?
確認するために、上記ストーリーを前回のexcelファイルの該当レベルに置くのだが、この作業をストーリーマッピングと呼んでいるわけだ。
該当レベルにイベントを置くと、そのイベントが、いったいどれだけのプレイタイムで現れるかが時間にマップされる。だからストーリーマッピングというわけだ。
なお、該当のシートは、サンプルの"ユーザーストーリー(vlookup)"だ。
■サンプルファイル・タイプ2
実際にマッピングされた例を見てみよう。
この表を見て、標準ユーザーが1日1時間のプレイをすると想定した話を考えてもらいたい。
最初のプレイヤーは1日めにどこまで進むだろうか?
レベル15~20の間で、覚えることは移動・話す・バトル・魔法の使い方ぐらいになる。
では2日目は…? というように「何日目に何がある?」とわかる。
最初のうちを実際に並べてみると…
等分にレベルを分割してストーリーを割り振るのは、かなりいただけない案に見える。前はイベント山盛りで、後半に進むにに従って、間延びしていくのは明らかだ。
ではこれを解決するために、イベントを後ろの方にまとめる?
次回に繋がる複雑な要素があるので、また改めて記述することにするが、イベントを後ろに固めるのは、いただけないやり口ということは書いておく。
というのも、実はこれはある程度しようがない、原理的な問題だからだ。
もともと成長するゲームのバランスは後半に行くに従って成長に時間がかかるのが大原則だ。
言い換えるなら、同一の強さ(レベル)でいる時間が長くなる。ということは、イベントの間を詰めようとすると、1レベルごとにイベントが起こるような設計になってしまう。
ところがこんな設計をすると、猛烈に開発コストが跳ね上がる。そして、世の中にはたいてい予算や投入できるリソースの上限がある。それを踏み抜いた作品を作るのは、コストの塊で、超大作でも作ってるのでもない限りムリだ。
ではコンソールではどのようにしてこの問題を解決するのか?
例では、16日めあたりで最終ダンジョンに入ると、次は最終武器を獲得するのが次のターゲットになるが、ここで…
『ミスター最終兵器を手に入れるためには、5つの不思議なアイテムが必要であり、その5つはすべて別々のダンジョンに鎮座しており、それぞれは隠されているという…5つのアイテムを手に入れるために、全世界を探すのじゃ勇者よ!(ただしヒントはなし)』
2日に一個のペースで見つければ、26日目の最終武器獲得までの間を持ちこたえられる…
ぶっちゃけた書き方をするなら、後半に行くに従ってナゾは複雑化…というか、面倒くさくなり、世界のあちこちをうろついて探しまわることで時間稼ぎをするわけだ。
ただし、当時(1980年代後半-90年代前半)のCRPGのゲームデザインでは、原理的な話として計算ずくで作っていたのではなく、経験的なデザインとしてやっていたのだろうと思われる(少なくとも僕はここまで詰めて考えてはいなかった。まあ僕だけかも知れないが)。
と、こんなわけで、いわゆるRPGメカニクスを使ったゲームを作って、普通にユーザーストーリーを作ると、後半は間延びする。
これをよく言えば複雑化、悪く言えば水増しすることで間延び感を抑えるのが基本的な戦略になるが…このレベルが上がる問題は、もっと大きな問題を引き起こす。
それは成長感の問題だ。
というところで、かなり長くなってしまったので次回に続く。続けば。
■パート(2)
コンソールでドラクエ1みたいな古典的なRPGを作っているとする。
●バトルはランダムエンカウンター
●プレイヤーは一人、敵も一体。対面型バトル。
●バトルは平均して10秒。バトル間には50秒。1分に一度戦闘をする。
●レベル50でクリア。
●プレイヤーは一人、敵も一体。対面型バトル。
●バトルは平均して10秒。バトル間には50秒。1分に一度戦闘をする。
●レベル50でクリア。
パート1で、この設定をして、桝田方式のユーザーストーリーの組み立て方をした時、TNL=戦闘回数とした場合には約37時間ほどでメインストーリーがクリアされる設定になっていることがわかった(まあ2つ目は意味ないけど)。
前回書いたオリジナルの桝田式は1987年に登場した技法だと書いたが、少し注釈をしておきたい。
桝田式はプレイタイムを計算して作ることも、もちろん出来るわけだけど、なぜしていなかったのか?
理由は簡単で、この技法が出来た時代は「プレイタイムは基本的に長ければ長いほど嬉しいもので、プレイタイムなんざ意識する必要はなかったからだ」と桝田さんは言っていた。
確かにこれは理解できる。
1987年当時のCRPGのプレイタイムはせいぜい20時間程度。今の感覚からしたら「短いっ!」って感じだ。そして当時はまだまだプレイタイムの短いアクションゲーム、シューティング、アーケードからの(苦しい)移植が主力で、長く楽しめるゲームは結構至高だった。だからプレイタイムがある一定以上だと推測できれば、気にしなかったのは理解できる。
ついでに書くと、当時は「ファミコンは子供のオモチャだがRPGは大人でも楽しめる」などという愚劣な記事が平気で週刊誌に載っていたりした。
桝田式はプレイタイムを計算して作ることも、もちろん出来るわけだけど、なぜしていなかったのか?
理由は簡単で、この技法が出来た時代は「プレイタイムは基本的に長ければ長いほど嬉しいもので、プレイタイムなんざ意識する必要はなかったからだ」と桝田さんは言っていた。
確かにこれは理解できる。
1987年当時のCRPGのプレイタイムはせいぜい20時間程度。今の感覚からしたら「短いっ!」って感じだ。そして当時はまだまだプレイタイムの短いアクションゲーム、シューティング、アーケードからの(苦しい)移植が主力で、長く楽しめるゲームは結構至高だった。だからプレイタイムがある一定以上だと推測できれば、気にしなかったのは理解できる。
ついでに書くと、当時は「ファミコンは子供のオモチャだがRPGは大人でも楽しめる」などという愚劣な記事が平気で週刊誌に載っていたりした。
ここでユーザーストーリー(しつこいようだが僕の独自用語である)をこんな風に決定していたとしよう。
上記のようにゲームの中身で教えたいことを、なんらかの形でゲームのリソースやパラメータと結びつけて並べる作業を、僕はストーリーマッピングと呼んでいる。
これまた独自用語。最初書いた時はマッピングって書いてたのだけど、友達に人に説明する時「ストーリーマッピング」のがいいと思うと言われたので、こっちで統一した。
上記内容は、雑すぎで、これを部下が出してきたら「ハ? この素案はどういう意図があんのか説明してくれる?」とか聞くけれど、例示ってことで許していただきたい。
また、ラスボスと遭遇・チュートリアル終了以外は全部5レベル単位にしているのは、ストーリーマッピングしてみる題材としての目安として意味があるからなので、これは意図的なものだ。
ここで、初代ゲーム名人、また史上初のプロゲーマーと呼んで良い、高橋名人の言葉に従って、ゲームは一日1時間ということにしよう。
するとこのゲームはクリアするまで約37日かかるゲームって話になる。
意識して欲しいが、37日は1ヶ月以上だ。つまりプレイヤーを1ヶ月の間、惹きつけるコンテンツを用意しなければならない。
では、それができているのか?
確認するために、上記ストーリーを前回のexcelファイルの該当レベルに置くのだが、この作業をストーリーマッピングと呼んでいるわけだ。
該当レベルにイベントを置くと、そのイベントが、いったいどれだけのプレイタイムで現れるかが時間にマップされる。だからストーリーマッピングというわけだ。
なお、該当のシートは、サンプルの"ユーザーストーリー(vlookup)"だ。
■サンプルファイル・タイプ2
ところで、この例は「ファミコン時代程度の極端にシンプルなRPG」を題材にすることで、しかも一本道ストーリーにすることで、わかりやすく単純化していることに留意してほしい。
本来は、いくつかのキーリソース(例えばゲームマネー・箱庭型ゲームでビルを建てた数など)に結び付けられた(ストーリーマッピング)ユーザーストーリーを複数書いた時、それがレベルやプレイタイムに紐付けられて、最終的に一直線に並べてみられるようになることに、最も大きなメリットがある。
本来は、いくつかのキーリソース(例えばゲームマネー・箱庭型ゲームでビルを建てた数など)に結び付けられた(ストーリーマッピング)ユーザーストーリーを複数書いた時、それがレベルやプレイタイムに紐付けられて、最終的に一直線に並べてみられるようになることに、最も大きなメリットがある。
実際にマッピングされた例を見てみよう。
この表を見て、標準ユーザーが1日1時間のプレイをすると想定した話を考えてもらいたい。
最初のプレイヤーは1日めにどこまで進むだろうか?
レベル15~20の間で、覚えることは移動・話す・バトル・魔法の使い方ぐらいになる。
では2日目は…? というように「何日目に何がある?」とわかる。
最初のうちを実際に並べてみると…
1日=移動/話/バトル/魔法
2日=最初のボス
3日=街2到着
4日=中ボス撃破できるか? ぐらい。
7日=街3到着
2日=最初のボス
3日=街2到着
4日=中ボス撃破できるか? ぐらい。
7日=街3到着
等分にレベルを分割してストーリーを割り振るのは、かなりいただけない案に見える。前はイベント山盛りで、後半に進むにに従って、間延びしていくのは明らかだ。
ではこれを解決するために、イベントを後ろの方にまとめる?
次回に繋がる複雑な要素があるので、また改めて記述することにするが、イベントを後ろに固めるのは、いただけないやり口ということは書いておく。
というのも、実はこれはある程度しようがない、原理的な問題だからだ。
もともと成長するゲームのバランスは後半に行くに従って成長に時間がかかるのが大原則だ。
言い換えるなら、同一の強さ(レベル)でいる時間が長くなる。ということは、イベントの間を詰めようとすると、1レベルごとにイベントが起こるような設計になってしまう。
ところがこんな設計をすると、猛烈に開発コストが跳ね上がる。そして、世の中にはたいてい予算や投入できるリソースの上限がある。それを踏み抜いた作品を作るのは、コストの塊で、超大作でも作ってるのでもない限りムリだ。
成長曲線を操作すれば「最初のうちはレベルアップにとんでもなく時間がかかるが、後半はガンガン…」なんてモノを作ることももちろんできるが、古の懐かしのソーシャルカードの特別なレアリティの特別なカードでもなければ、全くおすすめしかねる。また成長をレベルで区切るのではなく、パラメータが少しずつ上がるようなゲームであろうと結果は変わらない。
ではコンソールではどのようにしてこの問題を解決するのか?
例では、16日めあたりで最終ダンジョンに入ると、次は最終武器を獲得するのが次のターゲットになるが、ここで…
『ミスター最終兵器を手に入れるためには、5つの不思議なアイテムが必要であり、その5つはすべて別々のダンジョンに鎮座しており、それぞれは隠されているという…5つのアイテムを手に入れるために、全世界を探すのじゃ勇者よ!(ただしヒントはなし)』
2日に一個のペースで見つければ、26日目の最終武器獲得までの間を持ちこたえられる…
ぶっちゃけた書き方をするなら、後半に行くに従ってナゾは複雑化…というか、面倒くさくなり、世界のあちこちをうろついて探しまわることで時間稼ぎをするわけだ。
ただし、当時(1980年代後半-90年代前半)のCRPGのゲームデザインでは、原理的な話として計算ずくで作っていたのではなく、経験的なデザインとしてやっていたのだろうと思われる(少なくとも僕はここまで詰めて考えてはいなかった。まあ僕だけかも知れないが)。
と、こんなわけで、いわゆるRPGメカニクスを使ったゲームを作って、普通にユーザーストーリーを作ると、後半は間延びする。
これをよく言えば複雑化、悪く言えば水増しすることで間延び感を抑えるのが基本的な戦略になるが…このレベルが上がる問題は、もっと大きな問題を引き起こす。
それは成長感の問題だ。
というところで、かなり長くなってしまったので次回に続く。続けば。
余談だが、一般的なF2Pのゲームでは1日1時間は長すぎる。
スマートフォン/フィーチャーフォンのF2Pのゲームは標準的には1日30分プレイされると想定しておくのがいい。
ここは東西を問わず同じデータが出てくる、とても面白いところだ。
ゲームロフトでは、1日の標準プレイ時間は、初日は45分、平日は30分、土日は若干ジャンルで変動があるけれど45分-1時間と計算すればいいと教えられた(そしてこの話でわかると思うが、1日のプレイタイムを非常に重要視していた)。
そのあとGREEさんと一緒に仕事をさせてもらったときに、ほぼ同じデータを教えてもらって「こっちは日本なのに同じだ」と驚いた(わずかに違うのは初日は45分ではなく1時間の想定で、土日は1時間。初日は最大90分程度まであり得ると教えてもらった)。
また、日本に戻ってきてから見る機会があったKPIのほとんどでも、とんでもなく面白い結果を見ることになった。
なんと、ゲーム内容に関わらず、一回のログインでプレイタイムが3分のゲームなら10回のログインが平均で、一回7分なら、一日4回のログインが平均回数で、結果として1日のプレイ時間の平均は30分という不思議な結果になっていた。
言い換えるならF2Pのゲームなら、通常のプレイヤーにとって、例のゲームのクリア時間は、75日ぐらいかかることになる。
スマートフォン/フィーチャーフォンのF2Pのゲームは標準的には1日30分プレイされると想定しておくのがいい。
ここは東西を問わず同じデータが出てくる、とても面白いところだ。
ゲームロフトでは、1日の標準プレイ時間は、初日は45分、平日は30分、土日は若干ジャンルで変動があるけれど45分-1時間と計算すればいいと教えられた(そしてこの話でわかると思うが、1日のプレイタイムを非常に重要視していた)。
そのあとGREEさんと一緒に仕事をさせてもらったときに、ほぼ同じデータを教えてもらって「こっちは日本なのに同じだ」と驚いた(わずかに違うのは初日は45分ではなく1時間の想定で、土日は1時間。初日は最大90分程度まであり得ると教えてもらった)。
また、日本に戻ってきてから見る機会があったKPIのほとんどでも、とんでもなく面白い結果を見ることになった。
なんと、ゲーム内容に関わらず、一回のログインでプレイタイムが3分のゲームなら10回のログインが平均で、一回7分なら、一日4回のログインが平均回数で、結果として1日のプレイ時間の平均は30分という不思議な結果になっていた。
言い換えるならF2Pのゲームなら、通常のプレイヤーにとって、例のゲームのクリア時間は、75日ぐらいかかることになる。
コメント
本筋とは関係ないところですが、「史上初のプロゲーマーと呼んで良い、高橋名人」と言うところで思わず「あっ、確かにそうだ」と声が出てしまいました。
お給料もらってゲームプレイを披露し、広告塔になる、だから、言われてみればなるほど確かにプロゲーマー。
プロゲーマーとか日本じゃなじみが無いなぁ、と思っていたのですが、思わぬところに元祖がw
お給料もらってゲームプレイを披露し、広告塔になる、だから、言われてみればなるほど確かにプロゲーマー。
プロゲーマーとか日本じゃなじみが無いなぁ、と思っていたのですが、思わぬところに元祖がw
| yuhkan | EMAIL | URL | 15/01/18 22:55 | t0GVXXic |
頼まれてもともと書きだしたシリーズなのですが、本にしたほうが楽なので、面倒くさくなってきてますw
| 岩崎 | EMAIL | URL | 15/01/18 11:32 | QEuNFotw |
超面白いです。
ただ、説明たしかにめんどくさそうですね・・・(実例のためにExcelで仮データまで作ってらっしゃるので。)
ただ、岩崎さん語でいうユーザーストーリーについての話は、日本語ではここだけしかソースが無いレベルなので、是非歴史に残していただきたいですmm
ただ、説明たしかにめんどくさそうですね・・・(実例のためにExcelで仮データまで作ってらっしゃるので。)
ただ、岩崎さん語でいうユーザーストーリーについての話は、日本語ではここだけしかソースが無いレベルなので、是非歴史に残していただきたいですmm
| Yomo | EMAIL | URL | 15/01/17 17:35 | 25mos3a6 |
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