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FF10の話(7) - FFⅧ・その2 ジュブナイルとヒロイン
えらく期間が開いてしまった。
全くメチャクチャに忙しくて、2月の半ばからまるで時間が取れず、土日だけでも原稿書いて、イチに間に合わせたいと考えてる所存でありまする。

というわけで、FF10の話を書くシリーズの第7回。
シリーズは以下。
FF10の話(1) - それは1991年から始まった
FF10の話(2) - ヘラクレスの栄光Ⅲの衝撃
FF10の話(3) - ファイナルファンタジーⅦ・その1
FF10の話(4) - ファイナルファンタジーⅦ・その2
FF10の話(5) - ファイナルファンタジーⅦ・その3(終)
FF10の話(6) - ファイナルファンタジーⅧ・その1

本編に入る前に簡単な注意。
このシリーズは『FFⅦ・Ⅷ・Ⅹ』について、もう超ネタバレのレベルで話が進んでいる。だからプレイしたことがなくて、そしてプレイする予定がある人は、ここから先はあまり読まないことをオススメしておきたい。

さて。
FFⅧのストーリーの話をすると、FFⅧはボーイミーツガールの恋愛ストーリーだ。
また、そのボーイ(スコール)とガール(リノア)、そしてその周辺にいる少年・少女が大人になっていく姿を描く群像劇であると同時に、通過儀礼ストーリーでもある…というのが、ゲームのテーマになる(通過儀礼というのは、成人の儀式を経て大人になる物語、とかそういうこと)。

だから舞台は学園になっているし、FFⅧの主人公たちはみんなとんでもなく若い。

なんせスコールもリノアも10代後半。サイファーだろうが雷神だろうが風神だろうが、カッコはともかく、全員もろティーンエイジャーで、おまけに一部の例外を除けば(中年女性が一度だけパーティに入ってくる)、主要登場人物はほぼ全員18歳以下だ(キスティス先生も18歳である)。
どう考えてもジュブナイルで、少なくとも渋い大人の冒険小説じゃない。

では、実際のストーリーはどのような構成なのか?

スコールは傭兵を育てるガーデンを卒業寸前の学生だが、子供のころのトラウマで人とうまく接することが出来ないガキだ。
そんなスコールは傭兵になって最初の任務でリノアという少女と出逢う。彼女から依頼された任務は、最初は子供のお遊びのレベルなのだけど、ある国を支配する魔女(この世界の設定としては強大な超能力を持っている女性)との戦いという、思いもかけない大きな戦いにつながっていく。
そしてスコールは魔女との戦いを通じて、強引なリノアの力で少しずつ心を開いて行き、学園のリーダーになって、激しい戦いの末、ついに魔女を倒す。
ところがみんなを救うために魔女を倒したはずなのに、そのバトルの直後にリノアが倒れ、眠りから覚めなくなる。
それにショックを受けたスコールは、リノアを目覚めさせる手がかりを求めて、リノアを背負って学園を飛び出すのだけど、結局、リノアが魔女になっていて(魔女の力は人から人に継承されるのがこの世界のルール)、そして遥か未来のアルティミシアという魔女にコントロールされようとしていることがわかる。
コントロールを防ぐため、リノアは封印されそうになるのだけど、それをスコールは取りやめさせ、魔女になったリノアを救い、世界を破滅から守るために、遥か未来に飛んで、全ての元凶になっている魔女アルティミシアを倒す。
でも、アルティミシアを倒した直後、スコールは自分のトラウマに勝てず、うまく元の時代に帰れなくなってしまう。そのスコールを助けたのはリノアだった。
そして物語は大団円を迎える。

と、こんなストーリーだ。
基本のストーリーラインは、いくつか突拍子がないところはあるけれど、スゴくストレートなジュブナイルストーリーで、昔、角川だの朝日ソノラマだのから出てたジュブナイルを夢中になって読んだ人は楽しめる作品だと思ってる。

ところで、これに加えて、FFⅧは時間ループもので、古典的なタイムパラドックスものでもある。

回想だったり夢だったり、いろいろな形で場面転換して、キャラクタの過去や伏線を組み立てるのは、『ヘラクレスの栄光3』でも『FFⅦ』でも使われている野島さんの得意技なのだけど、特にFFⅧでの使い方は恐ろしく良く出来ている。
どんな風に使っているのか?

なんの説明もなく、突然眠くなり、はっと気がつくとスコール達はラグナって名前の人間として行動する夢を見る。起きた時、夢だと思うのだけど、その場にいる全員が同じ夢を見ているってことがわかり「どうやら夢ではない」とわかる。
このラグナってキャラクタ、最初は何者なのか、どこにいるのか全く説明されないのだけど、プレイを進めるに従って、ラグナがいた場所を訪れることになり、プレイヤーのストーリーと重なり始め、20年ほど昔にいた人間だってことがわかってくる。
そして、さらにストーリーが進行すると、ラグナはどうやらエスタという国にいるのではないかと思われること、さらにエルオーネという女の子がラグナが好きだったレインという女性と死に別れたとき、死に目にも会えなかった過去を修正するために、スコール達をラグナに『ジャンクション(意識だけ時間旅行させる方法)』させていた真実が判明する。
このエルオーネの能力を使い、過去も未来もなくしてしまおうとしているのが、遥か未来の魔女アルティミシア。アルティミシアはエルオーネの能力を真似た機械で、スコール達のいる時間の魔女を使い、エルオーネを捕らえ、時間圧縮で何もかもがグシャグシャになった世界を作ろうとしている。
この、アルティミシアがエルオーネを探しまわっているのを利用して、スコール達は遥か未来に飛び、アルティミシアを倒す。
倒した直後、時の流れが崩れ、スコールとアルティミシアは、スコールが幼少の時代にたどり着く。そしてスコールが「ママ先生」と呼んで慕っていた女性が死ぬ寸前のアルティミシアから魔女の能力を受け継ぐ。
そして、ママ先生にスコールは「自分が”Seed"で"ガーデン"からきた傭兵であること、魔女と戦うこと」などと教え、時の流れに乗って去っていく。

と、このあたりが時間テーマになっているパーツになっている。話を時系列で最初から並べると下のような構造をとっている。
  • 十数年前、ラグナがレインと死に別れる。これで孤児になった子供(スコール)が孤児院を経営するママ先生に引き取られる。
  • ママ先生(既に魔女)は、ある日、未来からやってきた少年と魔女と会う。少年は先生に魔女と戦う"SeeD"を産む"ガーデン"のアイディアを教えてくれる。そして、魔女(アルティミシア)から魔女の力を受け継ぐ。
  • ところが、アルティミシアは未来の魔女で、遥か未来からママ先生を遠隔制御しはじめる。
  • ママ先生はコントロールされてしまい。恐ろしいママ先生魔女になり、ある国を支配する。
  • そのママ先生魔女を倒すためにSeeD(スコール達)がやってくる。
  • ママ先生魔女は倒され、その力はリノアに継承される。
  • リノアを救うためにスコール達は遥か未来に飛び、アルティミシアを倒す。
  • そして(2)に戻る。


初めて僕がこの手の円環構造になっている始まりも終わりもない、タイムパラドックスものを読んだのはハヤカワの『時間と空間の冒険』という短篇集に収録されていた「存在の輪」だったのだけど、ここまでストレートな円環になっている作品は久しぶりに見た気がした。

まあ、このタイムパラドックスを気持ち良いと思うか、気持ち悪いと思うかは人それぞれだけど、構成としてはとても良く出来ていると思う。
と、そんなわけで、FFⅧはジュブナイルとしても時間者としても良く出来た構成の物語で、僕は大好きなのだけど、一般的にはあまり高い評価を得られなかったように思う。
これにはいくつかの理由があると思っている。

まず全員のガキっぽさ。最初に書いたとおり、ガキなんだから当たり前なんだけど、よく悪くもシリアス・深刻といっていいFFⅦのストーリーが非常に高く評価されていて、こういうジュブナイルストーリーが受け入れられなかったのだろうということが一点(そして僕はというと、そのFFⅦのストーリーに対して納得がいってなかったので、評価を見てイラっとしていた)。

次に、やはり時間を扱ったせいでストーリーがわかりにくいこと。時間を扱っていて、ラグナなどが伏線として機能するためには、ストーリーを覚えていなければならないし、さらにゲームの中でスゴく情報が断片的なので、これがやっぱり難しいと感じた人が多かったのだろう(わからない、かもしれないけど)。

そして…これもとても大きかったと思うのだけど、リノアが非常にエキセントリックなヒロインだったということ。
良くも悪くも子供っぽい、周囲のことをあまり考えずに突っ走るキャラで、どちらかというと行動する前に悩むタイプのスコールを無理やり引っ張る感があり、とても嫌われていたと思う。

ただ、これについてあえて書くと、野島さんのヒロインは、リノアに限らず、エキセントリックなキャラが多い。
実際にFFⅦ以降、Ⅹまでのエキセントリックと僕が思うヒロインを並べると、ユフィ・エアリス・リノア・セルフィ・リュック、対して普通の方がティファ・キスティス(微妙だけど)・ルールー(これも微妙だけど…)・ユウナ、ほぼ50%ぐらいはエキセントリックだと思うのだ。

また、FFⅧは声がないということが、とても大きな問題になり始めたシリーズでもあったのが、評価が高くならない理由になっていた…と思うのだけど…

…というところで、次回に続く。
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