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1991年6月 仕様削減
「あーいいよ、季節のグラフィック削ろう。グラフィックはなくても成り立つんだよ」

市ヶ谷の天外2開発室で、開発のメインメンバーが集まって会議をしている中で、桝田さんが面倒くさそうに、少し投げやりな口調で言っていた。
僕は猛烈に機嫌が悪くなっていた。

山根がついにギブアップし、このままでは天外2のグラフィック(特にマップ)は間に合わないと言った瞬間だった。

オリジナルの天外Ⅱの企画では、全マップに季節があり(春夏秋冬)、イベントも季節に合わせて設計されていた。

だからシナリオは、秋の飛騨から話が始まり、冬の京都の北で絹と会って、春から夏に向かって進み、大文字で終わる、つまり桝田さんは季節の移り変わりを楽しんでもらうために、秋⇒冬⇒春⇒夏と、季節ごとに京都に戻ってきて、また出て行く、シナリオ上の構成をとっていた(なんでか夏からスタートするとか書いてたので修正)。

大きなカッコイイポイントとしては、秋から冬に向かう所で、京都の北に移動した所で大江山にたどり着く所で雪が降り、雪の大江山で絹を救い出す…なんて展開になっていた。


そして、これは前にも書いたことだけど、季節ごとにマップが変化する要素を、僕も山根も桝田さんも、およそスタッフ全員が「まあ作業量は増えるけど、なんとかなるだろ」と、それほど厳しい事と思っていなかった。

なぜなら、僕らはマップを作るための元型のチップ(とかキャラクタとかBGとか呼んでいた)を作るところに一番手間がかかり、実際のマップなんざあ、それをハメていけばいいだけの簡単な作業(で、そしてものすごくあっというまに出来る)と思ってたからだ。
だから、一旦チップを作れば、それを季節ごとに色変えて、雪載せるなんて楽勝だと思っていたし、その作業はあっというまに出来るつもりでいた。
だけど、実際にはマップを作るのは、途方も無い作業だった(マップをほぼ4倍に増やす作業だ。途方もないに決まっている)。
その作業量に、山根が間に合わないと音を上げた瞬間がついにやってきた…それがこの会議の瞬間だった。

最後に、桝田さんは面倒くさそうに(こういうメンドくさいことを決めるとき、桝田さんは結構投げやりな口調でしゃべる癖がある)
「寒くなってきましたねえ、とか言わせておけばいいんだよ、なんとかなるよ」
と言った。

こうして、あっけなく季節は天外2から消えることになったのだけど、こういうことはこれから先もたくさん続いていくことになる。

例えば、天外Ⅱでは城ごとに特殊なギミックを用意することになっていた。
つまり城全部がスペシャルなマップって仕様だ。もちろん、階段から何からなにまで特殊なギミックの山だったのだけど、これまたマップが間に合わなくなって、そしてプログラムも間に合わなくなって、仕様が削減されていくことになる。
こんな風に、様々なものを削減していく作業が6~7月の間に連鎖的に起こっていき、91年の8月末から開発体制そのものも大幅に変更になるのだけど、そんなことを知らない僕は僕で山根に腹を立てていた。
なんせ、山根は楽勝で間に合うと言っていて、コトここに至って「間に合わない」と言い出したのだから当たり前だ。

もちろん、20年以上経った今現在の目から見て、過去の自分に皮肉をいえば、まだ自分はなんとかなる、ビジュアル(アニメーションパート)やゲームのプログラムの遅れは、自分たちの力があれば解決出来ると思っている、極めて甘い目算の下に怒っている。
日々のスクリプトプログラマのセリフ、「マップがもっと早く来れば大丈夫です」といった、極めて甘い計算に成り立つ言葉を、甘いとも思わずそうだと思いながら、作らせつつ、信じがたいほどの膨大な量のビジュアルを組み込む作業に忙殺されつつ、こんなものはなんとかなると思っている、極めて甘い目算の下に怒っている。
「お前、山根怒っているヒマあったら、自分の仕事のことを考えたほうがいいぜ」
と、そう言いたいのだけど、いずれにしても、この段階で天外2から季節は消え去ることになったのだった。

ちょびっと追記。
季節は春夏秋冬の4つだけど「状態」は5つあった。雪>春>夏>秋>冬(枯れ木)って仕掛け。
|| 20:46 | comments (0) | trackback (0) | ||

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