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ホラーゲームの問題点
むかーし電撃PSに書いた文章なのだけど、ホラーゲームについて、ある意味ホラー大好きな僕がずっと思っていることなので、前半部の歴史の部分を切り捨てた後半部を、少しブラッシュアップして載せておく。

ホラーゲームのテーマは当然「恐怖」。これが疑いもなく最優先される。
プレイヤーに怖さを味わってもらうことが最大の目標だ。怖くないホラーゲームなんてホラーじゃないし、やる価値もない。
これは誰もが納得するだろう。
お話の面白さとか、そういうのなんてのは、ともかく怖さがあってからだ。
ホラーと銘打たれているが、全然怖くはなく、でもお話は面白いなんてゲームがあったとして、これを「ホラーを味わいたい人が買うのか?」と考えれば、そう言い切るのも理解出来るだろう。

ところで、ほとんどのホラー(恐怖)映画は、一度見ると怖くなくなる

恐怖の大半は「次になにが起こるか分からない」からで、何かが起こるか知っていれば、生理的な嫌悪感のある場面でもない限りは、怖いと感じることはまずないのは当たり前だ。

そしてそれが理由でホラーを沢山見ると、次の予測が簡単に立つようになって、ちっとやそっとでは怖くなくなる。ホラーマニアはその怖くないのすら楽しんでしまうのだけど、これはおかしい楽しみ方と言われてもしょうがないと思う。


ところで、当然の話だけど「(たいていの)ゲームにはゲームオーバーがある」。
つまりゲームオーバーになって、再度プレイをして学習することで、より先に進む通常のゲーム形式では何度でも同じシーン、同じ恐怖を体験することになる。

特にアクション形式のゲームではその傾向が強くなる。
ところでRPGは一見ゲームオーバーがないように見えるが戦闘による敗退→再度バトルとか、戦闘によるリソース減少で撤退といった現象はゲーム的にはゲームオーバーに近い。

すなわちゲームは、自分で操作できる疑似体験の観点からすると、映画や小説よりも感情移入が強い分、恐怖は大きくなり得るが、その構造の特徴上、何度も同じ所をなぞるために、恐怖感が薄れやすい欠陥があるわけだ。

ここからが本題になる。

ホラーゲームはゲームである以上「ゲームオーバーがある(これは言い換えるとパズルや攻略があることになる)」ということは、やり直しがある。そして当然の事ながら同じ場面を何度もプレイすることになり、最初にあった恐怖感などどこへやら。ひたすらクリアを目指して、パズルに挑む態度でプレイしていくことになる。
むろん、普通のゲームの考え方からすると、別段なんら驚くこともないし、問題もない。

だけど、ことホラーゲームでは事情が違う。
ホラーで一番大事なはずの「恐怖」よりも、クリアを目標とする『ゲーム要素』の方が大きくなることになり、恐怖を味わう観点がどこかに行ってしまうのだ。

その意味では、ゲームオーバーのない、それなりの着地点にたどり着くことが保証されているノベル型の方が、恐怖を味わう点では優れているわけだけど、反面「ゲームオーバーがなく、それなりのエンディングにたどり着ける」のは、映画や小説と同じ系統の楽しみで、体験するゲームの強みが薄れてしまう。

すなわち、恐怖をあたかも自分の体験のように楽しめるアクション型のゲームでは、ゲーム要素が恐怖を薄める役割を果たし、そうではないノベル型のゲームでは、今度は恐怖のレベルが映画や小説の体験レベルに落ちてしまう(無論、映画や小説レベルが悪いわけではない。だが「自分の体験」レベルに比べれば弱いのは確かだろう)。
だからといって、アクションゲームで死なないのでは、当然、恐怖もヘッタクレもなくなってしまうので「死ぬ危険性」は必須だ。ここにホラーゲームの本当の問題点が現れる。

つまり「死の危険がなければ恐怖は味わえないが、死んでしまう事を繰り返すと恐怖は薄くなる」
これは単純なゲームバランスの問題ではなく、ホラーの本質に迫る問題だ。

ゲームである以上、ゲームオーバーがあり、攻略があるが、攻略過程で全てを知るために怖くなくなる

では、どうすればいいのか?
正直な話として書くなら、ホラーゲームがゲームである以上、半分は仕方ないのは間違いない。
ゲームである以上、どうしても攻略は存在するし、攻略する過程で怖さがなくなってしまうのは、ある程度は仕方ない。

だが恐怖をある程度長持ちさせる方法はあるし、それは疑いもなく難易度を上げる(つまりポンポン殺す方向)ではない。
と書くのもだ。
シンプルに考えると、難易度を上げれば死ぬ可能性が上がるのだから恐怖は増しそうな気がするが、現実的には「同じ所で死ぬ回数が増える、すなわち繰り返し回数の増大、すなわち恐怖のすり切れ現象」が早く起こるだけだ。
しかも難易度を上げると、攻略にプレイヤーを集中させる効果があり、ますます怖さを感じる余裕がなくなってしまう。すなわち難易度を上げるのは攻略要素を強くするだけで恐怖の要素を強化するわけではない。
では、どうすればいいのかというと、これは発想の逆転が必要だ。
恐怖映画で、一番怖いのはいつなのかといえば「登場人物が逃げ回っているとき」だ。

すなわち「こちらが手出しすることが難しく、死の危険を感じる状態で、逃げ回っている(隠れている)状態」がもっとも怖い状況であり、HP満タンの状態から、いきなり見つかって、3発殴られたら死んでしまうのでは驚きはしても恐怖を感じるとは言い難いことがわかるだろう。
つまりだ。
恐怖を本当に感じるゲームを作りたければ、反撃することが全く不可能なわけではないが、出来ればやりたくない程度には死の危険が十分にあり、なおかつ逃げ回ることは出来て、敵の行動がある程度は予測出来るが不確定性があるシチュエーションを組み立てるのがいいということになる。

これを実際のゲームに当てはめて考えると、まず簡単に死ぬのではなく「じわじわとHPが減っていく」方がいいことになる(回復出来なくはないが、回復自体も困難であることが望ましい)。
なぜならHPが減れば死の危険は近づき、それをはっきり意識出来る方が怖いに決まっている。そして死の恐怖はギリギリまで引き延ばされた方が怖いに決まってる。

これを困難だ、と思うかも知れないけれど、例えば採用されたのを見たことはないゲームメカニックで結構実現することが出来る。
さすがに自分の商売に大きく関わるネタなので詳しくは書かないw

そして、さらにチェックポイント(セーブ)はこまめで、失敗して戻る距離は短いこと。長いとゲーム難易度の上昇を招き、やはり「攻略要素」が増えてしまう。あとまあ章立てになっていて、章の間でHPが回復してしまう方がホラーって題材では有効だと個人的には思っている。

攻撃(反撃)手段はあるが、絶対的な物ではなく、出来ればあまり使いたくないものであり、敵から隠れたり、逃げたりすることは十分に出来るが、絶対に安全になったと自信を持てないことが望ましい。
要は安全地帯はゴールのみであるのがベストで、なおかつ反撃は出来ても、あまり効果がない、もしくはデメリットが大きいのがいいわけだ。
そして、こういうバランスで、初めてのプレイで、カギをドアに対して使えばもう大丈夫(クリア)という所までたどり着けるが、そこで死んでしまう、のがホラーゲームでは理想のバランスではなかろうか。

無論、今まで書いたことは、一般化された話でないのは確かだが「怖いホラーゲーム」を一度見てみたいものだと思うのだ。
|| 22:39 | comments (3) | trackback (0) | ||

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コメント
>ぐら様
おおう! Amnesia は、やれてないゲームなのですよ、ずっとやりたいと思ったまま忘れてたので、チャンスw

>raoul様
そのとおりなんですが、ノベル系には「小説系の怖さ以上に到達はしない(音加えて若干プラスできる強みはある)」って弱点もありましてw
| 岩崎 | EMAIL | URL | 13/01/10 15:11 | uYbiDtpQ |
その点ホラー・ノベルゲーム(弟切草みたいな)は岩崎さんのおっしゃった「一度見ると怖くなくなる」を捉えて「すべてのコンテンツを一度しか見なくてもいい」ようにする事でホラー足りえたゲームだと言えますね。
| raoul | EMAIL | URL | 13/01/10 14:41 | KIUy/6zE |
ご存じかも知れませんが Amnesia THE DARK DESCENT が、その条件をかなえています。
当時ゲームシステムがよくできていて感心しました。
| ぐら | EMAIL | URL | 13/01/09 23:42 | e8owYpeU |
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