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ゲームレビューについて
このメーカーはどこまでレビューに干渉できる? 誰も語らなかった「メーカーチェック」の表と裏とはで「メーカーはどこまでレビューに干渉出来る」と銘打たれながら、実際にレビューをやっているライターの意見や声が具体的な形で載っている部分が少ないことが気になったので…そして書きにくいのも分かるので、実際やっていた人間が経験を書いておく(当たり前だが、現役でレビュワーやっている人間がヘタにそういうことを書くこと自体が物議を醸すのは明らかだろう)。
※ 推敲中に「具体的な形で載っている部分が少ない」ってのを削ってしまっていたのを付け加え直した。


さて、ゲームのレビューはBeep!で勝手にやってたのから、今までだからかれこれ25年ぐらいやっていることになる。
このうち、いわゆるゲームに点数をつけるレビュワーをやってたのは1988-1999の11年間。PCエンジンとPS1で、記事で話題になっているのはもちろんコレの事なので、点数をつけていたときの事を書く。
もちろんメーカーからのクレームで点数に若干調整が入ったり、編集部からの要請で単語を修正したりということはあったが、100点つけろだの、0点にしろだのといった圧力なんてものはなく、おおむね自由にやらせてもらっていた。
修正は具体的には【話にならない】という文を【問題がある】程度に直してくれないか、みたいな感じだったり、点数であと5点なんとかなりませんか? みたいな感じ。メーカーだって出来の悪いゲームの時は分かっているのだから、点数に期待はしない。
当たり前だが、点数が良くて評価もいいときは修正はたいていいらなくてダメなときになんとかならないかと聞かれるイメージだった。そしてダメなゲームはメーカーだってわかっているので「話にならない」→「問題を感じた」程度に柔らかくしてくれないかとか「こういういいところがあんだから+5ぐらいなんとかなんね?」ぐらいのものだった。つまりどちらかというとお願いだ。
(点数が良くても修正を受けたことは数回あったが、それはレビューで書いた要素をメーカー側に「伏せてくれ」と言われたのが、そのほとんどだった。簡単に書けば、それは書いて欲しくないってところを書いたってことだ)

ごく希に(10年やってて2回程度だったと記憶がある)ほぼ書き直してくれと言われたことはあるけれど、これはメーカーチェックではなく編集部からの要望で「僕のレビュワーの立ち位置からすると、このレビュー内容はいただけない」だった。端的に書けば、編集部からボツを食らっただけで、メーカーから文句を言われたわけではない。
当たり前だが、数人いるレビュワーにはそれぞれゲームの見方の立ち位置があり、その立ち位置からのレビューを要求されている。ゲームに対して適当な自分の感想文、それも悪口と揚げ足取りを書けばクールだと勘違いしてる、掃いて捨てるほどある自称評論とは違うのだ。

また一部で噂されている「点数を買う」なんてのは、僕の知る限りではない。もちろん、自分は一度もそんなことは要求されたことはない。他の雑誌でもないと思う。あれば狭い業界だ、噂は広がる。
この手の陰謀論はどんだけ否定しても信じたい人は勝手に信じるので、言ってもしょうがないで放置するのが一番早いのだけど、仮に点数を金で買えるなら、僕はゲームを作る側でもあったのだから絶対に知っている。だいたい金で点数買えるなら、もっと点数の変なソフトいくらでもでてくるし、天外2とかエメドラとか作ってるときに、広報対策でその話が出てくる。出てこないのが、金で買えない証拠だ。だいたい金でレビュー調整出来るなんて、雑誌としては自殺行為だ。やるわけない。

むしろレビューをやっているうえで問題になったのは未完成ソフトが来たときと致命的なバグがあったときだった。ぶっちゃけそういうときはレビューを止めて欲しくなるのだけど、だいたい代えが効かないのでレビューすることになる。
こういう問題はPCエンジンでCDROMになって、マスターの提出から発売までの期間が短くなって起こるようになった。ROMの時代なら、デバッグして、ほぼバグも取れた最終段階のROMがサンプルで来たのが、生産期間が短くなったモノで、作ってる途中のモノが来るようになったわけだ。
もうどうしようもないバグを見つけて、思わずレビュー担当に
「このバグ、残ってたら致命傷で、とてもまともな点はあげられないよ?」
「メーカーは大丈夫だと言っています」

担当だって問い合わせてくれているわけで、大丈夫だと言われたら、信じてバグはないのを前提にしてレビューを書くしかない。蓋を開けてみたら、発売されたら残っていて、当たり前だけどバグは取れているのが前提だから書くわけにもいかないので、レビューでも当然触れていない。全く読者を裏切った気分になって、ガッカリしたこともある。
この手の事には結構悩まされて、プレイしていてあんまりひどいバグなので「レビュー版ではXXXというバグがあり、ひどい目にあった。製品版では当然取れていると思うが」という文を入れさせてくれと編集部に言ったこともあるし、編集部判断で急遽ソフトが入れ替えになったことすらあったりする。
ROM時代が終わり、光学メディア時代になってからあとのレビューのソフトは、だいたいデバッグしている途中のモノが来るのが当たり前で、バグがあるだの、読み取りが遅いなんて事も多く、とんでもないときには製品版とまるでバランスが違ったり、操作法が追加されてるなんてことすらあったりした。それらをある程度「製品はこうなるのだろう」と推測してプレイせざるを得ないところがあり、これが難しいところだったわけだ。

そんなわけで、若干の修正をお願いされることはあったが、おおむねレビューは自由に書かせてもらえるのが真実で、むしろバグや未完成なソフトの問題に悩まされることの方が多いのだ。
(あ、あと特殊な入力デバイス前提のものも辛い。たいていサンプルが一個しかないので、レビュー出来る期間が短くてとても厳しいのだ。特にパチンコなんてあのコントローラか通常コントローラかで面白さがまるで違うと思うので、全く困らされた)

点数をつけるレビューからは引退して久しいが、ライターは今でも現役だし、状況はあまり変わってないのは知っている(ツールが面倒になって昔よりレビューが面倒になったぐらい)。レビューで悩むことは、普通の人が想像するのは全く別なところなのだ。

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