2011-06-08 Wed [ レビュー::本 ]
「ヒットする」のゲームデザインを読んだ。
元のタイトル"21th Century Game Design"は直訳すると「21世紀のゲームデザイン」ぐらいだから「え?」といいたくなるタイトルだけど、本の内容から考えると、実はいいタイトルだと思う。
プロのゲームデザイナーもしくはプロのゲームデザイナーになりたい人は絶対に読むべき、とてもいい本の一つだと思うけれど、反面、ゲームを商業製品なのと同時に作品でもあると考えているタイプのゲームデザイナーは(読んだ上で)一定の距離を取りたくなる本だ。
さて、この本は大きく2部に分かれている。
■第1部 序章とユーザー分析。
■第2部 それを受けてのゲームデザイン。
…この内容を見て「ユーザー分析と、それを受けてのゲームデザインってどういうこと?」といいたくなる人は多いだろう。
実はこの本におけるゲームデザインは以下の考え方で成り立っている。
では具体的に2部はどんな内容になっているのかというと、以下のとおり。
■第1部 数種類の方法でユーザーを分類する
細かい突っ込みどころはあるけれど、ユーザー層を分析し、それぞれのユーザー層はどのような癖を持っていて、どれぐらいのサイズ(人数)なのかを解説。また、どのようなアプローチをすれば、それぞれの層のユーザーにリーチ出来るのか?(情報を手に入れたり、購入意欲を刺激できたりという意味)ということを説明する。
そしてEAやいくつかのメーカーが使用しているユーザー分類の方法を説明した後に、Myer-Brigges類型法とDGD1人口統計モデルに基づいて、具体的にユーザーを分類し、さらにそれぞれのユーザー層が「どのようなゲーム体験を好むのか?」についてまで具体的に分類するところまでやってしまう。
■第2部 ゲームデザイン
このユーザーインターフェースやゲームデザインは第一部で分類したユーザーのこのタイプと合っていると、ゲームのスタイルやユーザーインターフェースについて解説し、最後にこのジャンルはこんな内容で、こんな歴史がある都合上、こういうユーザーに好まれるというのも網羅的に解説している。
例えば「なりきりゲーム(GTAなど)」は、こんな歴史を持っていて、このタイプのユーザーにあっている、このタイプのユーザーインターフェースは拡張性に乏しいがカジュアル層には受け入れられる、という具合。
また、このタイプのゲームは予算かかる、こーいうのは予算がかかるなんてあたりまで露骨に書かれている。
だから「一人称(FPS視点)のゲームは昔は金がかからなかったが、没入感の高さや様々な理由からFPSが各社のAAAタイトル(一番金がかかってるタイトル)の主戦場になっていて、それと比較されるから、予算がないなら出来るだけ使うのは避けるべき」なんてモノスゴいことが平気で書かれてる。
で、この本は上記の3つの内容(ユーザー分類・どのゲームはどのユーザーに合う・そのゲームはいくらかかる?)しか書かれていない、と考えて間違いはないけれど、本当にそれについて丁寧に書かれている。
そして、この本のコワいところは、自分のデザインする(したい)ゲームをこの本を使って分類すると
僕は、この本を読んで、ものすごく合理的で感心した。そして書かれているUIの指摘やコンテンツについて意識するべきだと思うけれど、反面、この分類は「失敗しない」ためのもので、これだけを信じて作るのは良くないだろう…と思ってしまう。
なぜなら、これと同じ事をハリウッド映画はやって成功しているのだけど、反面、全部同じになってて、僕のようにヒネた人間に面白いヒネた映画はハリウッド周辺からしか出てこない。
そして僕はそういうヒネた映画こそが世界を豊かにしていると思っているので、この本は「とてもすばらしくて絶対に読むべき本。困ったときのベースラインにするべきだけど、この方法だけでゲームデザインするのはお勧めできない」と思ってしまうのだ。
ところで第二部はユーザー分類を覚えているのを前提で書かれているので、第一部のユーザー層を覚えていないと、いちいち読み直すはめになるのだけど、これがものすごく大変。僕はあとからエクセルで表にしてPDFにした。Copyrightの問題がなければ、ここでばらまきたいぐらいだ。
そして最後に、この本には決定的に欠けているものが一つあり、そして、最初からこの本は提供する気がないのは一つ指摘しておきたい。
それはシナリオだ。
この本の中ではシナリオについては一切触れていないし、どのようにすれば劇的シナリオを作れるのかといったような技術については一切書いていない。
それについてはシナリオの教科書でも読んでおけ、ということなのだろう。
というわけで世界で一番スバラシイと思っているシド・フィールドのシナリオ本についての(僕が書いたw)解説をリンクとして貼っておく。
元のタイトル"21th Century Game Design"は直訳すると「21世紀のゲームデザイン」ぐらいだから「え?」といいたくなるタイトルだけど、本の内容から考えると、実はいいタイトルだと思う。
プロのゲームデザイナーもしくはプロのゲームデザイナーになりたい人は絶対に読むべき、とてもいい本の一つだと思うけれど、反面、ゲームを商業製品なのと同時に作品でもあると考えているタイプのゲームデザイナーは(読んだ上で)一定の距離を取りたくなる本だ。
さて、この本は大きく2部に分かれている。
■第1部 序章とユーザー分析。
■第2部 それを受けてのゲームデザイン。
…この内容を見て「ユーザー分析と、それを受けてのゲームデザインってどういうこと?」といいたくなる人は多いだろう。
実はこの本におけるゲームデザインは以下の考え方で成り立っている。
●ユーザー層を分類。
●様々なゲームデザインやUIをどのユーザー層に合うかを説明。
●それぞれ、どれぐらい手間(金)がかかるかを説明。
言い換えると、この本は「僕のあなたのやってるゲームデザインは、どんなユーザーに受けて、そのユーザーがいったい何人いて、どれぐらい売り上げが期待できるのか?」を教えてくれる、モノスゴい本なのだ。●様々なゲームデザインやUIをどのユーザー層に合うかを説明。
●それぞれ、どれぐらい手間(金)がかかるかを説明。
では具体的に2部はどんな内容になっているのかというと、以下のとおり。
■第1部 数種類の方法でユーザーを分類する
細かい突っ込みどころはあるけれど、ユーザー層を分析し、それぞれのユーザー層はどのような癖を持っていて、どれぐらいのサイズ(人数)なのかを解説。また、どのようなアプローチをすれば、それぞれの層のユーザーにリーチ出来るのか?(情報を手に入れたり、購入意欲を刺激できたりという意味)ということを説明する。
そしてEAやいくつかのメーカーが使用しているユーザー分類の方法を説明した後に、Myer-Brigges類型法とDGD1人口統計モデルに基づいて、具体的にユーザーを分類し、さらにそれぞれのユーザー層が「どのようなゲーム体験を好むのか?」についてまで具体的に分類するところまでやってしまう。
■第2部 ゲームデザイン
このユーザーインターフェースやゲームデザインは第一部で分類したユーザーのこのタイプと合っていると、ゲームのスタイルやユーザーインターフェースについて解説し、最後にこのジャンルはこんな内容で、こんな歴史がある都合上、こういうユーザーに好まれるというのも網羅的に解説している。
例えば「なりきりゲーム(GTAなど)」は、こんな歴史を持っていて、このタイプのユーザーにあっている、このタイプのユーザーインターフェースは拡張性に乏しいがカジュアル層には受け入れられる、という具合。
また、このタイプのゲームは予算かかる、こーいうのは予算がかかるなんてあたりまで露骨に書かれている。
だから「一人称(FPS視点)のゲームは昔は金がかからなかったが、没入感の高さや様々な理由からFPSが各社のAAAタイトル(一番金がかかってるタイトル)の主戦場になっていて、それと比較されるから、予算がないなら出来るだけ使うのは避けるべき」なんてモノスゴいことが平気で書かれてる。
で、この本は上記の3つの内容(ユーザー分類・どのゲームはどのユーザーに合う・そのゲームはいくらかかる?)しか書かれていない、と考えて間違いはないけれど、本当にそれについて丁寧に書かれている。
そして、この本のコワいところは、自分のデザインする(したい)ゲームをこの本を使って分類すると
●どんなユーザーがプレイすることが想定できて
●そういうユーザーのために、どんなユーザーインターフェースを用意して
●コンテンツは何を用意しないとダメで
●そのユーザー層のサイズはどれぐらいで
●売り上げ上限はこれぐらいだから
●予算はこの中に納まらないとダメ
と、ガッカリな気持ちになってしまうほど冷酷に合理的にはじき出せてしまうことだ。●そういうユーザーのために、どんなユーザーインターフェースを用意して
●コンテンツは何を用意しないとダメで
●そのユーザー層のサイズはどれぐらいで
●売り上げ上限はこれぐらいだから
●予算はこの中に納まらないとダメ
僕は、この本を読んで、ものすごく合理的で感心した。そして書かれているUIの指摘やコンテンツについて意識するべきだと思うけれど、反面、この分類は「失敗しない」ためのもので、これだけを信じて作るのは良くないだろう…と思ってしまう。
なぜなら、これと同じ事をハリウッド映画はやって成功しているのだけど、反面、全部同じになってて、僕のようにヒネた人間に面白いヒネた映画はハリウッド周辺からしか出てこない。
そして僕はそういうヒネた映画こそが世界を豊かにしていると思っているので、この本は「とてもすばらしくて絶対に読むべき本。困ったときのベースラインにするべきだけど、この方法だけでゲームデザインするのはお勧めできない」と思ってしまうのだ。
ところで第二部はユーザー分類を覚えているのを前提で書かれているので、第一部のユーザー層を覚えていないと、いちいち読み直すはめになるのだけど、これがものすごく大変。僕はあとからエクセルで表にしてPDFにした。Copyrightの問題がなければ、ここでばらまきたいぐらいだ。
そして最後に、この本には決定的に欠けているものが一つあり、そして、最初からこの本は提供する気がないのは一つ指摘しておきたい。
それはシナリオだ。
この本の中ではシナリオについては一切触れていないし、どのようにすれば劇的シナリオを作れるのかといったような技術については一切書いていない。
それについてはシナリオの教科書でも読んでおけ、ということなのだろう。
というわけで世界で一番スバラシイと思っているシド・フィールドのシナリオ本についての(僕が書いたw)解説をリンクとして貼っておく。
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